問いとしてのウェルビーイング―人・社会・自然のよい状態を考える

齊藤 紀子 編著
荒川 敏彦 編著
権 永詞 編著
伊藤 康 編著

定価(紙 版):3,080円(税込)

発行日:2025/09/17
A5判 / 224頁
ISBN:978-4-502-55541-1

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本の紹介
人・社会・自然のよい状態であるウェルビーイング。本書は、貧困や差別といった社会に潜む「構造的暴力」をウェルビーイングの視点から問い直し、克服の道筋を探る。

目次

序章 構造的暴力を補助線として「人・社会・自然のウェルビーイング」を考える
1 本書がめざすもの
2 問題意識
3 ウェルビーイングをめぐる議論の経緯
4 ウェルビーイングを測定する代表的プログラム
5 ウェルビーイングとサステナビリティの関係
6 本書におけるウェルビーイングの捉え方
7 本書の構成

第Ⅰ部 問題提起 構造的暴力のありか
第1章 健康の脱自明化─ウェルビーイングの条件を拡張するために

1 SDGsの「健康」とWHOの「健康」─第一の転回
2 WHOにおける健康の再定義への動きとその挫折─第二の転回
3 健康を再定義する要求はなにを可視化したか
4 「多元的ウェルビーイング」の探究へ

第2章 幸福追求の陥穽─個人主義的な幸福観についての批判的検討
1 はじめに
2 主観的幸福感研究の背景としての個人化
3 ポジティブ感情の文化政策
4 幸福は個人的なものといえるか?
5 人は誰でも当たり前のように幸福を目指すのか?
6 おわりに─社会学的ウェルビーイングに向けて

第3章 地球を社会の一員として考えてみる─テレストリアルたちのウェルビーイング
1 はじめに─ウェルビーイングを誰のものとして考えるか
2 「人新世」をめぐる議論─人間と環境の関係性をとらえなおす
3 アクターネットワーク理論とテレストリアル
4 テレストリアルな実践─スタンディング・ロックの抵抗運動から学ぶ
5 おわりに─テレストリアルたちのウェルビーイング

第Ⅱ部 問題の所在 構造的暴力のあらわれ
第4章 自然のウェルビーイングを維持するためには何が必要か─「科学」の役割を考える

1 はじめに
2 環境の価値
3 何故,環境を破壊するような経済活動が行われるのか?
4 環境と経済の「両立」
5 環境問題と「科学」─福島第1原発事故の事例から
6 まとめに代えて

第5章 排除と差別の現在地─マジョリティのアイデンティティ・ポリティクスから考える
1 はじめに
2 肯定的承認の不平等
3 個人化と自己実現の時代
4 排除型社会の到来
5 マジョリティとアイデンティティ・ポリティクス
6 「自己憎悪」の解体と「本質化」の解除
7 アイデンティティ・ポリティクスの今後

第6章 ウェルビーイングと地域共生社会の捉え方
1 令和6年度版「厚生労働白書」の特徴
2 こころの健康とこころの不調の関係
3 地域包括ケアシステムの次は地域共生社会
4 社会的孤立と地域共生社会─「通常の学級に在籍する特別な教育支援を必要とする児童生徒の実態調査」結果から
5 国府台病院児童精神科での取り組み
6 児童精神科医療現場から見えてくる課題
7 国民がウェルビーイングを実感できる社会の実現
8 まとめ─期待される地域の役割

第Ⅲ部 問題の解決 構造的暴力の克服
第7章 多様な選択肢のある社会づくり─市民の役割とその促進

1 社会のウェルビーイング(よい状態)が意味するもの
2 社会のウェルビーイングを実現する主体としての市民
3 ニーズ多様化に呼応した市民─有償ボランティアやソーシャルビジネスとして
4 セクター間に取り残されたニーズへ対応する有償ボランティアの会計的ジレンマ─求められる法規制のつくりかえ
5 多様な選択肢のある社会づくりを担う市民─誰も取り残さないために

第8章 サステナブルな都市の創造
1 炭素文明と都市
2 ドーナツ経済学と社会的共通資本
3 Think Globally, Act Locally
4 現代都市の形成
5 現代都市が直面する課題
6 サステナブルな都市の条件
7 都市と人間と民主主義

第9章 生命系の世界をひらく有機農業─自然と人間の共存を求めて
1 生命系の世界とは
2 生命系から離反する近代農業
3 有機農業運動と地域主義
4 脱成長社会にむけて─有機農業の「慣行化」に抗えるか

第10章 地域通貨を活用したエシカル・ツーリズムの可能性の検討─沖縄県宮古島市の「理想通貨」の事例から
1 問題関心
2 先行研究の検討
3 ケーススタディ─「理想通貨」の事例から
4 結論

終章 ケイパビリティ・アプローチからウェルビーイングを考える
1 王道かつ異端の経済学者
2 センが提起したケイパビリティ・アプローチ
3 ケイパビリティに着目することで見えやすくなること
4 自由を重視するセンの真骨頂─「持続可能な発展」批判
5 ケイパビリティ(機能)とは具体的に何か?─リスト化の是非
6 まとめに代えて

著者紹介

齊藤 紀子(さいとう のりこ)

荒川 敏彦(あらかわ としひこ)

権 永詞(ごん えいじ)

伊藤 康(いとう やすし)
[プロフィール]
1965年東京生まれ。
1989年一橋大学社会学部卒業。
1994年一橋大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。一橋大学経済学部助手。
1995年千葉商科大学商経学部専任講師、助教授、教授を経て、現在、千葉商科大学人間社会学部教授。

[主な著作]
“Signaling effects of carbon tax in Sweden: an empirical analysis using a state space model”, in Market Based Instruments: National Experiences in Environmental Sustainability (Edward Elgar 2013), “The effects of carbon/energy taxes on R&D expenditure in Sweden”, in Carbon Pricing, Growth and the Environment (Edward Elgar 2012)など。