- 本の紹介
- かつて商法改正の立案担当者として、長年にわたり理念と現実の相克を経験した著者が、現行会社法の成立経過と構成、内容について条文に則し克明に検討。会社法制の問題点を分析した渾身の大作。
目次
会社法の解明
目次
序章 会社法解明のための分析―論点の交錯
一 会社法の問題点
二 分かりやすさの要請
三 根源を踏まえたルール設定の要請
四 総論と各論との交錯・関連
第1章 会社法の理念と体系―現代化
Ⅰ 現代化の意味
一 社会生活を規律する道具としての会社法
二 法の体系化と理念の整理
三 規制緩和の意味
Ⅱ 会社法における制度・条文の整理
一 会社制度の構成
二 会社法の条文整理の特色
三 便宜主義への傾斜とリアリズムの欠如
第2章 会社法と関係政省令
Ⅰ 会社法の編別(整理と配列)
一 会社法の編成
二 1編総則と2編株式会社の編別
三 3編持分会社という編別
四 4編社債の編別
五 5編という編別
六 6編外国会社・7編雑則・8編罰則の編別
七 総括―会社の種類の意味
Ⅱ 会社法と関係政省令
一 会社法施行令
二 関係法務省令の根拠
三 法務省令への委任
四 法務省令制定の委任に関する検討
五 省令制定の手続
第3章 法律(条文)としての分かりやすさ・分かりにくさ
Ⅰ 条文の内容
一 分かりにくさの根源
二 対応ニーズの不明確
三 平仄(バランス)の問題
四 合理性・論理性(説明論理)の不在
五 定めの過剰と不足
六 法制の不連続
Ⅱ 条文の表現・文言
一 その分かりにくさ
二 定義(用語)の分かりにくさ
第4章 会社法制の整理・会社総則
Ⅰ 会社法制の意義
Ⅱ 会社法1編総則の整理
一 会社法と商法との関係
二 定義規定(2条)
三 社団性・営利性
四 商行為と商人性
五 会社法の規定と商法総則規定との異同
Ⅲ 株式会社への有限会社の統合
一 その意味
二 株式会社の特質
三 有限会社を統合した株式会社法制のあり方
Ⅳ 持分会社という区分
一 持分会社とされる会社の種類
二 合同会社
三 持分会社という整理
Ⅴ 持分会社法制
一 設立の定め
二 社員
三 管理
四 社員の加入及び退社
五 計算等
六 定款変更
七 合同会社における社員有限責任
第5章 株式会社法制の整理
Ⅰ 株式会社の実態と特質
一 株式会社の特質に関する整理
二 株主の有限責任のための条件
三 株式の自由譲渡性(投下資金の回収)
四 所有と経営の分離
Ⅱ 株式会社の類型化の問題点
一 典型と標準型
二 会社法制定前と会社法の考え方
三 会社法の定義による株式会社の類型化
Ⅲ 株主の地位に関する整理
Ⅳ 株式会社に関する各制度の意味と本書での扱い
一 主な対象
二 株式会社の設立
第6章 株主有限責任を支えるもの
Ⅰ 問題の所在
一 有限責任の機能および株主の権能・負担の均衡
二 社員無限責任の会社の場合
三 社員有限責任の会社の場合―その効果と責任(負担)
四 所有と経営の分離
Ⅱ 自己資本の確保
一 資本金の意味―自己資本確保の中核
二 会社法における資本金に関する処理の論点
三 剰余金払戻規制
四 剰余金の配当等の決定
五 剰余金払戻規制違反
Ⅲ 計算の適正とその開示
Ⅳ 企業統治体制の確立
Ⅴ 合同会社
第7章 株式・株主
Ⅰ 株式と株主
一 株式の帰属者としての株主―株式会社の基本要素
二 会社の利益と株主の利益
Ⅱ 会社法における株主平等原則
一 会社法制定前の基本的な考え方と会社法
二 会社法109条がもつ意味―平等原則の意味をどう把握するか
三 種類株式と株式の単位
四 株主平等と関連するいくつかの問題
五 株主平等原則の意味づけ
Ⅲ 株主の権利行使
一 共有株式
二 基準日後に株式を取得した者の議決権
三 株主名簿への記載
四 単元株式
五 株主の株式買取請求権
六 社債等振替法における少数株主権等の行使
Ⅳ 株式の譲渡等
一 株式の譲渡制限の意義等
二 株式譲渡制限の範囲と承認の方法
三 株式譲渡制限の代償
四 自己株式の取得
五 子会社による親会社株式の取得制限
Ⅴ 募集株式の発行等
一 募集
二 新株発行に関する責任
第8章 新株予約権
Ⅰ 新株予約権の肥大化と整理の欠如
一 新株予約権の本質
二 新株予約権の価値算定
三 新株予約権の一般化
Ⅱ 新株予約権制度の構造
一 新株予約権の発行
二 行使の際の出資
三 新株予約権原簿・譲渡等
四 新株予約権と株主平等―企業買収防衛策との関係
第9章 株式会社の機関
Ⅰ 株主総会・種類株主総会
一 権限
二 招集
三 招集通知
四 参考書類の交付と書面または電磁的方法による議決権行使
五 提案権
六 総会検査役
七 株式相互保有規制
八 決議の定足数・要件
九 議決権の不統一行使
十 説明義務・議長
一一 資料または会社の業務および財産の状況の調査・総会の
延期または続行
一二 議事録等
一三 種類株主総会
Ⅱ 役員等の選任・解任
一 補欠役員の選任
二 取締役等の資格等
三 取締役等の任期
四 会社役員の解任
五 監査役・会計参与・会計監査人の独立性保障
六 役員等欠員の場合
Ⅲ 取締役・取締役会
一 取締役
二 取締役会
Ⅳ 会計参与
一 会計参与の意味
二 会計参与の権限等
三 会計参与報告・会計参与による会計書類等の開示(備置き等)
Ⅴ 監査役・監査役会
一 監査報告
二 監査役の権限・義務
三 監査役会
Ⅵ 会計監査人
Ⅶ 委員会・執行役
一 委員会設置会社
二 取締役会(取締役)・委員会(委員)・執行役
Ⅷ 役員等の責任
一 会社に対する責任(423条等)
二 第三者に対する責任(429条)
三 会計監査人の責任
四 責任免除(限定)
五 責任追及の方法
六 会社による責任追及
七 株主代表訴訟
第10章 会社の計算等
Ⅰ 総説
一 会社の計算と会計
二 会社法における計算規定の整理―会社の種類との関係
三 株式会社における計算
Ⅱ 株式会社の計算に関する規定
一 会計に関する原則規定
二 会計帳簿
三 計算書類等
四 資本金の額等・剰余金の配当等
Ⅲ 持分会社の計算
Ⅳ 法務省令(計算規則)への委任
一 会社法と会社計算規則
二 計算規則中1編から3編までの定め
三 計算関係書類の監査
四 計算書類等の株主への提供・承認の特則に関する要件
五 計算規則6編から8編までの定め
第11章 株式会社の情報開示
Ⅰ 株式会社の情報開示の意味と方法
一 情報開示の意味
二 開示の相手と方法
Ⅱ 情報開示の体系と内容
一 開示の目的と体系
二 公衆に対する開示
三 会社の利害関係者に対する開示
四 開示の後退・不明確化
五 株式会社の類型と情報開示―取締役会非設置会社
六 定款等の開示―親会社社員への開示
七 株主名簿等の開示
八 総会議事録等の開示
九 取締役会議事録等の開示
十 計算関係書類・会計帳簿等の開示
一一 その他の開示
Ⅲ 総会参考書類による開示
一 総会参考書類の意味
二 参考書類記載事項(参考事項)
Ⅳ 事業報告およびその監査報告
一 事業報告―会社の年次報告
二 事業報告の監査
三 事業報告の内容
四 監査報告による情報開示
五 事業報告等の株主への提供
第12章 社債・組織再編等・雑則等
Ⅰ 外国会社・罰則
一 外国会社
二 罰則
Ⅱ 社債
一 社債法制について会社法で定める意味
二 会社法の定め
Ⅲ 組織再編等
一 総説
二 持分会社の扱い
三 組織再編行為の実体規定
四 組織再編の手続
五 組織再編手続における情報開示
Ⅳ 雑則
一 総説
二 訴訟
三 非訟(7編3章)
四 登記(7編4章)
五 公告(7編5章)
終章 会社法が残した課題
Ⅰ 会社法の枠組み
Ⅱ 公開会社法制
一 会社法と金融商品取引法
二 会社法と金融商品取引法との調整
三 支配株主の移動(企業買収)・公開買付け等
Ⅲ 企業結合法制
Ⅳ 会社法における規律確保
条文索引
会社法索引
会社法施行規則索引
会社計算規則索引
著者プロフィール
稲葉 威雄(いなば・たけお)
昭和13年(1938年)生まれ
京都大学法学部卒業
弁護士
法務省大臣官房審議官,広島高等裁判所長官,早稲田大学大学院法務研究科教授等を歴任。
〔主要著作〕
『改正会社法』(1982年,金融財政事情研究会)
『会社法の基本を問う』(2006年,中央経済社)
「会社法の論点解明(1)〜(11)」民事法情報245号〜257号(2007年・2008年)
- 担当編集者コメント
- 長きにわたり立法実務に携わり、会社法の理論・実務を検討しつくした著者による大作。粘り強い思索をバックボーンとする鋭い指摘は、他では期待できない。