- 本の紹介
- 戦略経営における予算管理の意義とその利用方法について、期中管理の視座に基づき、戦略内容アプローチと戦略プロセスアプローチの両面から包括的に究明した研究書。
目次
戦略経営における予算管理
目次
序章 予算管理の現代的意義の探究
─戦略経営における予算管理の有用性の検討
1 予算管理は戦略経営に役立たないのか
2 予算管理批判とその視座
2.1 近視眼的行動の誘発:戦略性の欠如,学習・イノベーション
の阻害,投資の抑制
2.2 変化に対する硬直性,柔軟性の欠如:固定的資源配分・固
定計画の弊害
2.3 予算管理研究の視座
3 戦略・イノベーションと予算管理
3.1 戦略内容アプローチと予算管理研究
3.2 戦略プロセスアプローチと予算管理研究
3.3 本書の研究課題
4 研究方法
5 本書の構成
第Ⅰ部 株式会社バッファローにおける定性的研究
─新たな理論の構築
第1章 株式会社バッファローのマネジメント・コントロール実践
1 本書−第Ⅰ部−における定性的研究の概要
2 バッファローの組織・競争環境・戦略
3 バッファローにおけるマネジメント・コントロールの仕組み
3.1 予算管理の構造:会計責任
3.2 予算管理プロセス
3.3 製品ロードマップ
4 バッファローにおける新製品開発
4.1 新製品開発プロセス
4.2 商品コンセプトの作り込み:技術と市場の調整
4.3 人的資源,スケジュールの調整:資源配分
4.4 全社目標,戦略と新製品開発の調整
5 新たな理論構築に向けて
第2章 予算主導型イノベーション─どのように予算のリズムと
管理会計計算はイノベーションを創出するのか
1 予算管理の科学的知識からの解放
2 予算管理実践へのエスノメソドロジー的アプローチ
3 ケーススタディ研究
3.1 組織・競争環境・戦略
3.2 予算管理と製品ロードマップ
3.3 予算編成とイノベーションの創出
3.4 予実管理とイノベーションの創出:予算のリズム,管理会計
計算,イノベーション
4 考 察
5 予算管理がイノベーションを主導する
第3章 予算管理による組織能力の活用と構築
1 資源ベースの戦略と予算管理
2 組織能力の活用・構築
3 ケーススタディ研究
3.1 バッファローの強み:環境適応力・イノベーション力
3.2 予算管理と環境適応・イノベーションの実現:組織資本と人
的資本の相互作用
3.3 組織資本の構築:予算管理システムの形成
3.4 人的資本の構築:管理会計リテラシーの向上による管理能
力の構築
3.5 組織能力の文脈依存性
4 予算管理による組織能力の活用・構築
第Ⅱ部 アンケート調査に基づく定量的研究
─構築された理論の統計的一般性の検証
第4章 日本企業の予算管理システムの運用方法及びその心理的
状態への影響
1 本書−第Ⅱ部−の目的
2 会計は人を動かす
3 アンケート調査の方法
4 予算管理の運用方法及び仕事に取り組む姿勢の現状
5 予算管理が心理的状態に与える影響
6 創意工夫を引き出す環境適応型システムとしての予算管理
第5章 製品イノベーションにおける予算管理の役割
1 戦略変化やイノベーションに予算管理は有用か
2 分析枠組みと仮説の導出
3 研究方法
3.1 分析データの収集
3.2 変数の設定
4 分析結果
5 本章の貢献
第6章 組織能力構築における予算管理の役割
1 戦略経営における予算管理の役立ち
2 分析枠組みと仮説の導出
3 研究方法
3.1 分析データの収集
3.2 変数の設定
4 分析結果
4.1 仮説H1,H2の検証
4.2 仮説H3の検証
5 本章の貢献
第Ⅲ部 管理会計リテラシーに関する定性的研究
─管理会計リテラシーに関する追加的検討
第7章 予算管理の一翼を担う管理会計リテラシーの向上
─ビジネスプロセスの(dis)embodimentプロセスとしてのBSC
1 予算管理と管理会計リテラシー
2 BSCの位置づけとそのプロセス
3 研究方法
4 ケーススタディ研究
4.1 戦略としての人的資源管理
4.2 CFCカンパニーにおける予算管理
4.3 全社的なBSCの導入及び位置づけ
4.4 ビジネスプロセスのdisembodiment:BSCの修正
4.5 ビジネスプロセスの明示化とそのembodiment:
管理会計リテラシーの補完・向上
5 考 察
6 下位管理者支援型の予算管理の構築を目指して
第8章 回収期間法の合理性─投資決定における管理会計
リテラシーと管理会計技法の相互作用
1 回収期間法は非合理的か?
2 回収期間法の採用状況と選好理由:先行研究と問題意識
2.1 投資評価技法の採用状況
2.2 回収期間法の選好理由
2.3 本章の問題意識と研究方法
3 投資評価技法の合理性
4 新日鉄における設備投資管理
4.1 設備投資管理プロセス
4.2 投資評価技法
5 新日鉄における割引回収期間法の利用:経済合理性
6 割引回収期間法の採用理由:経済合理性と組織的合理性
7 回収期間法の合理性
終章 予算管理の現代的意義
1 本書の研究課題
2 得られた知見
3 貢 献
引用文献
索 引
著者プロフィール
堀井 悟志(ほりい さとし)
1975年生。
京都大学大学院経済学研究科博士後期課程学修認定退学。
京都大学博士(経済学)。
愛知産業大学経営学部専任講師を経て,現在,立命館大学経営学部准教授。その間,University of New South Wales客員研究員,日本管理会計学会参事,公益財団法人メルコ学術振興財団調査研究室嘱託研究員・調査研究室長補佐などを歴任。日本管理会計学会,日本原価計算研究学会,日本会計研究学会,European
Accounting Association会員。
専門領域は,管理会計論。
[主要業績]
『戦略をコントロールする─管理会計の可能性』共監訳,2008年,中央経済社
「予算管理とイノベーションの創出」『管理会計学』第23巻第1号,2015年
「組織能力構築における予算管理の役割」『原価計算研究』第37巻第1号,2012年(平成25年日本原価計算研究学会 学会賞(論文賞)受賞)
「株式会社バッファローにおける新製品開発管理─管理会計の役割を中心に─」『メルコ管理会計研究』第2号,2009年
「回収期間法と貨幣の時間価値─新日本製鐵株式会社の事例より─」『原価計算研究』第32巻第2号,2008年,他。
- 担当編集者コメント
- 現在、一部では「脱予算管理」が提唱され、学会でも研究対象から外れたようにも見受けられます。
しかし、はたして予算管理は不要なものなのか、なんらかの役割をはたしているのではないか、との問題意識から、予算管理の現代的意義を究明しています。
実務にも有用な内容になっておりますので、研究者・実務家ともに是非ご覧ください!