- 本の紹介
- 2010年代後半に入ると、EUはギリシャ危機、ウクライナ危機、難民危機、英国のEU離脱等の実存的危機が顕著になった。本書は、多様な視点から揺れるEUの今を俯瞰。
目次
第1章 EU一般データ保護規則に見る規範パワーとその社会学的検討
第2章 「EUの規範パワー論」に対する批判的再考察―国際機構論の観点から
第3章 法の支配の危機へのEUの制度的対応
第4章 EUのカルテル規制における域外企業の無差別待遇―実態か単なるスローガンか
第5章 EUエネルギー同盟の政治過程における気候変動規範の強靭性と脆弱性
第6章 「次世代のEU基金」および2021-2027年中期予算計画(MFF)合意形成への道―問題の背景、交渉過程、将来的な課題
第7章 EUロマ政策規範―反ジプシー主義との闘いとロマの非対象化へ?
第8章 分離独立運動とEU―ベルギーを例として
第9章 EUの対テロ戦略
第10章 コロンビアにおけるEU麻薬規制政策の展開
第11章 産業連関表からみるEU諸国のパワーバランス
- 担当編集者コメント
- <本書の趣旨>
2010年代は、国際社会の中でも、とりわけ欧州連合(EU)の実存的意義が問われた10年間となりました。2010年代の前半にはEUがノーベル平和賞を受賞したように、EU(およびその前身の欧州共同体(EC))の第二次世界大戦後の欧州国際秩序の平和と安定に対する貢献が評価されましたが、他方で同後半には、ギリシャ危機、ウクライナ危機、難民危機、英国のEU離脱(いわゆるBREXIT)に見られるように、EUの実存的危機が顕著になったといえます。
そこで本書では、以下の視点から「揺れるEU」の今を俯瞰することを特徴としています。
第1に、EUを「規範」および/もしくは「パワー」の側面から理解することに重点を置いたことです。これは、いわゆるマナーズの規範パワー論にのみ依拠するとEUそのものを把握することが時として難しくなるという問題意識から、より幅を広げて「揺れるEU」の今を把握することに努めています。
第2に、「一種独特な政体」としてのEUを、EU政治の眼「だけ」で見るのではなく、国際関係論、EU政治、社会学、国際機構論、国際法、経済学、比較政治など多方面(多様なディシプリン)から把握することを目的としたことです。
そして第3に、EUというマルチレベル・ガバナンスの総体を多層的に把握するよう努めています。EU研究においては、どのディシプリンにおいても、それをどこからどう見るか、という視点の多様性は重要です。本書では各著者に普段の研究活動から最適と思われる切り口で、EUの今を俯瞰していただいています。
なお、本書は、関西学院大学産業研究所の研究成果を書籍化したものです(関西学院大学産研叢書44)。
<執筆者一覧(執筆順)>
第1章:鈴木謙介(関西学院大学社会学部准教授)
第2章:望月康恵(関西学院大学法学部教授)
第3章:武田 健(東海大学政治経済学部講師)
第4章:吉沢 晃(関西大学法学部准教授)
第5章:市川 顕(東洋大学国際学部教授)
第6章:東野篤子(筑波大学人文社会系准教授)
第7章:山川 卓(立命館大学情報理工学部授業担当講師)
第8章:松尾秀哉(龍谷大学法学部教授)
第9章:小林正英(尚美学園大学総合政策学部准教授)
第10章:福海さやか(立命館大学国際関係学部准教授)
第11章:髙林喜久生(関西学院大学経済学部教授)