国際ビジネス法概論

阿部 博友

定価(紙 版):2,860円(税込)

発行日:2022/03/18
A5判 / 236頁
ISBN:978-4-502-38341-0

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本の紹介
国際取引法の基本的な論点から、不公正な活動規制、さらには人権・環境をめぐる最新動向までを、事件等具体例により解説。グローバルなビジネスでの活躍を目指す方の必読の書。

目次

はしがき 

PART Ⅰ 国際ビジネス法の基礎
CHAPTER 1 契約締結上の過失理論

[国際合弁契約交渉からの離脱事件]
  1.契約準備段階を規律する準拠法の決定について 
  2.不法行為責任について 
  3.損害賠償の範囲について 

CHAPTER 2 予備的合意書の法的効力
[MOUによるライセンス条件確認事件]
  1.契約の成立は契約の準拠法に従って判断する 
  2.メモランダム・オブ・アンダスタンディング(memorandum ofunderstanding)の法的効力 

CHAPTER 3 口頭証拠排除原則と完全合意条項
[国際ライセンス契約の最恵待遇違反事件]
  1.コモンローにおける口頭証拠排除原則 
  2.完全合意条項 
  3.修正制限条項 

CHAPTER 4 書式の闘いと基本合意書
[紛争解決条項をめぐる書式の闘い]
  1.書式の闘い(battle of forms) 
  2.UCC §2-207 
  3.ウィーン売買条約(CISG)の関連規定 

CHAPTER 5 買主の代金支払義務
[買主による信用状開設拒否事件]
  1.商品代金の国際決済手段 
  2.判決要旨 
 
CHAPTER 6 信用状の開設・条件変更通知と船積義務
[信用状条件変更通知の遅延に基づく損害賠償請求事件]
  1.信用状取引について 
  2.通知銀行が受益者に対して負う義務 
  3.本判決について 

CHAPTER 7 契約不適合と買主の救済
[食肉ダイオキシン汚染事件]
  1.公的規制と商品の契約適合性 
  2.代金減額権 
  3.売主の追完権(図表7-1参照) 

CHAPTER 8 継続的契約の解除
[独占的販売代理店契約の更新拒絶事件]
  1.継続的供給契約の終了をめぐる判例・学説の状況(日本法の下で)
  2.代理店保護法について 

CHAPTER 9 港湾運送事業者の責任
[港湾荷役不備による損害賠償請求事件]
  1.インコタームズについて 
  2.外航貨物海上保険契約について 
  3.本CASEについての裁判所の判断 

CHAPTER 10 定期傭船契約と運送契約の責任主体
[穀類運送契約の不履行を理由とする損害賠償請求事件]
  1.傭船契約について 
  2.海上運送人の責任 
  3.運送契約上の責任主体 

CHAPTER 11 国際航空貨物運送と法
[航空貨物紛失事件]
  1.旧ワルソー条約の解釈 
  2.旧ワルソー条約の責任制限規定の適用の有無について 
  3.ヒマラヤ条項について 

CHAPTER 12 製造物責任と集団訴訟
[新薬製造物責任訴訟事件]
  1.製造物責任法およびPL訴訟について 
  2.損害賠償額について 
  3.陪審制度 
  4.クラスアクション制度について 
  5.ディスカバリー制度について 
  6.PL保険制度 

CHAPTER 13 国際裁判管轄
[売買代金不払い事件]
  1.本CASEの解説 
  2.合意管轄条項 

CHAPTER 14 国際商事仲裁による紛争処理
[国際業務提携契約の破棄事件]
  1.代替的紛争解決手段としての仲裁について 
  2.仲裁合意は一般的合意と区別される 
  3.仲裁条項の準拠法 
  4.仲裁判断の承認と執行 

CHAPTER 15 ADRの活用
[ADR合意の履行拒絶事件]
  1.本CASEの解説 
  2.紛争解決手段としてのADRの利点 
  3.本事件の背景と本分担契約について 
  4.調停契約の裁判所による執行の可能性 
  5.調停契約と当事者の権利保護の問題 

CHAPTER 16 国際投資仲裁
[外国投資家の公正・衡平待遇義務違反事件]
  1.本件請求に係る本仲裁廷の管轄権の有無について 
  2.チェコ政府によるBIT違反の有無について 

PART Ⅱ 公正な国際ビジネスの実現に向けて
―不公正活動規制―
CHAPTER 17 国際カルテル
[リジンカルテル事件]
  1.競争法コンプライアンスの重要性 
  2.反トラスト法違反の諸類型 
  3.リニエンシー 
  4.犯罪人引渡条約とアメリカ反トラスト法違反 

CHAPTER 18 競争法の域外適用
[マリンホース市場分割カルテル事件]
  1.本CASEの解説 
  2.本CASEの争点 
  3.わが国におけるリニエンシー制度 

CHAPTER 19 外国公務員等贈賄
[ベトナム高官への贈賄事件]
  1.外国公務員に対する贈賄と行為者の処罰 
  2.外国公務員への贈賄と法人罰 
  3.ファシリテーション・ペイメントとは何か 
  4.外国公務員贈賄防止指針 

CHAPTER 20 FCPAの適用拡大
[ナイジェリア高官への贈賄事件]
  1.本CASEの解説 
  2.FCPAの適用範囲 
  3.FCPAの摘発事例 
  4.コンプライアンス体制構築により法人処罰が免除された事例 

CHAPTER 21 安全保障貿易管理
[イラン向けジェットミル不正輸出事件]
  1.本CASEの解説 
  2.安全保障貿易管理とは何か 
  3.リスト規制とは 
  4.その他の規制(キャッチオール規制) 
  5.わが国の企業の安全保障貿易管理の状況 

CHAPTER 22 資金洗浄規制
[犯罪収益法違反事実の開示義務違反事件]
  1.本CASEの解説 
  2.マネーロンダリング(資金洗浄)規制とは 
  3.犯収法における特定事業者とは 
  4.OFAC規則とは 

CHAPTER 23 多国籍企業の租税回避措置
[スターバックスに対する追加徴税命令事件]
  1.本CASEの解説 
  2.租税回避地(タックスヘイブン)とは 
  3.BEPSの基本的な考え方 

CHAPTER 24 EU一般データ保護規則
[顧客情報漏洩事件]
  1.GDPR違反に対する監督当局とその手続き 
  2.グーグルに対するCNILの決定 
  3.GDPR違反行為と認定された行為 
  4.その他の違反事例 
  5.情報流出等のインシデント発生の際の72時間ルール 

PART Ⅲ 国際ビジネス法の課題
CHAPTER 25 紛争鉱物輸入規制

[アップル製品不買運動事件]
  1.コンゴ共和国における内戦と紛争鉱物 
  2.イナフ・プロジェクトについて 
  3.アメリカ・ドッドフランク法
    (The Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act) 
  4.EU紛争鉱物規制 

CHAPTER 26 国際的人権の保護
[タイ産養殖エビ輸入差し止め事件]
  1.現代奴隷法成立の背景 
  2.イギリス現代奴隷法 
  3.現代奴隷撲滅に向けたその他の立法例 

CHAPTER 27 知的財産権保護と国家の非常事態
[違法コピー薬輸入差し止め事件]
  1.AIDS問題:2000〜2001年の状況 
  2.製薬会社のビジネスモデル 

CHAPTER 28 EU環境・有害物質規制
[飼料添加物使用禁止事件]
  1.EUにおける環境・有害物質規制と予防原則 
  2.REACH規則 
  3.RoHS規制 
  4.WEEE規制 
  5.環境保護と企業の責任 

CHAPTER 29 海洋汚染事故
[タンカー座礁事故による油濁事件]
  1.本CASEの解説 
  2.傭船者の社会的責任 
  3.船主責任制限条約(LLMC)について 
  4.船主責任保険(P&I保険)について 

CHAPTER 30 有害物不法廃棄と環境破壊
[石油採掘事業による環境破壊事件]
  1.事実関係(図表30 -1参照) 
  2.エクアドル裁判所の判断 
  3.常設仲裁裁判所の判断
 
おわりに
事項索引 

著者紹介

阿部 博友(あべ ひろとも)
[プロフィール]
1980年一橋大学法学部卒業。筑波大学ビジネス科学研究科博士課程修了。博士(法学)。三井物産株式会社勤務を経て,2009年-2011年明治学院大学法学部教授。2021年3月現在,一橋大学大学院法学研究科教授。
法務省日本法令外国語訳推進会議座長。復興庁行政レビュー外部有識者委員。復興庁入札等監視委員会委員。
国際取引法学会理事副会長。一般社団法人GBL研究所理事副会長。

[主な著作]
『リーガルイングリッシュ』(中央経済社、2021)
『ブラジル法概論』(大学教育出版、2020)
『ビジネス法体系 国際ビジネス法』(第一法規、2016)[共著]
『現代企業法務』(大学教育出版、2015)