税理士のための「事実認定」の実務

梅本 淳久

定価(紙 版):3,190円(税込)

発行日:2023/05/30
A5判 / 240頁
ISBN:978-4-502-46031-9

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本の紹介
文書や供述等を踏まえた事実認定は職人芸ともいわれる。税務調査や争訟に耐え得る事実や証拠の考え方・それらの認定・評価技法、実務への当てはめ方をやさしく実践的に解説。

目次

はじめに

第1章 法的三段論法とは?
 第1節 理論編
   1.裁決書の構成
   2.法的三段論法とは
   3.具体例
 第2節 事例編
  法人の取締役が,外注先に対して架空の請求書を発行するよう
  依頼した行為は,法人による行為と同視できるとした事例
  〈令和元年6月20日裁決(審判所HP)〉
   1.関係法令
   2.法令解釈
   3.認定事実
   4.当てはめ

第2章 事実認定の構造
 第1節 理論編
 第2節 事例編
  貸金請求事件
   1.関係法令
   2.事実認定の構造
   深読み! 消費貸借契約の事実認定 

第3章 書証による事実認定
~その文書に証拠力はあるのか?
 第1節 理論編
   1.書 証
   2.処分証書と報告文書
   3.押印のある私文書の扱い
   4.書証の実質的証拠力の判断
   5.書証と人証
 第2節 事例編
  家族経営の中小企業において,株主総会議事録が存在しないこ
  とは,株主総会決議の不存在を意味するものであるかが争われた事例
  〈東京地判平成27年2月26日(TAINS/Z265-12613)〉
   1.問題の所在
   2.機関決定の存否
   3.議事録の不存在
   4.結 論

第4章 人証の証拠評価~供述はウソか,本当か?
 第1節 理論編
   1.人 証
   2.供述の信用性判断
  &emsp深読み! 供述内容の信用性を比較する 
 第2節 事例編
  売上金額を脱漏する目的で,取引先に依頼し,決済方法を変更
  した事実があったとは認められないとされた事例
  〈平成31年2月7日裁決(審判所HP)〉
   1.担当者Kの供述の信用性
   2.F社J代表の供述の信用性
   3.結 論

第5章 間接事実による事実認定
~決め手がなければ積み上げる
 第1節 理論編
   1.通謀虚偽表示(民法94条)
   2.租税回避行為を仮装行為とみる方法
   3.通謀虚偽表示に係る事実認定
 第2節 事例編
  売買契約は,租税特別措置法65条の2の特別控除の適用を受け
  る目的で行われた通謀虚偽表示であって,無効であるとされた事例
  〈名古屋高判平成19年7月26日(TAINS/Z257-10757)〉
   1.X社による本件土地Aの取得
   2.仮装の動機(1)
   3.仮装の動機(2)
   4.結 論
   5.当事者の法律関係(参考)

第6章 税務調査等における事実認定と証拠
 第1節 理論編
   1.争訟に耐え得る証拠収集
   2.供述の証拠化
 第2節 事例編
  同族会社の外注費の計上は,仮装によるものとして損金算入を
  認めなかった事例
  〈平成8年3月11日裁決(審判所HP)〉
   1.全体像
   2.F社に対する外注費
   3.G社に対する外注費
   4.H社に対する車両賃借料
   5.結 論

第7章 私法と税法との関係
 第1節 理論編
   1.原 則
   深読み! 契約の解釈の必要性 
   2.例 外
   深読み! 実質主義と外観論 
 第 2節 事例編
  交換・寄託の混合契約に基づく交換取引による金地金の移転は,
  所得税法33条1項に規定する「資産の譲渡」に該当するか否か
  〈名古屋高判平成29年12月14日(TAINS/Z267-13099)〉
   1.関係法令
   2.寄 託
   3.契約解釈
   4.租税法の適用
   5.結 論
   深読み! 本判決に対する評価 ─懐疑的な立場と肯定的な立場─ 

第8章 主張立証責任
~主張立証しないと負けるのは納税者? 課税庁?
 第1節 総 論
   1.民事訴訟
   2.税務訴訟
   深読み! 国税不服審判所(審査請求)と裁判制度の違い 
 第2節 各 論
   1.必要経費
   2.損 金
   3.租税特別措置法
   4.所得控除
   5.加算税の賦課要件・免除要件
   6.その他

第9章 税目別 事実認定の実際
 序 本章の概観
   1.国税通則法:納税者は「更正を予知」していたか?
   2.所得税法:所得区分をめぐる事実認定の深度
   3.相続税法:米国の合有不動産を「取得」した時期 123
   4.法人税法:寄附金認定されない債権放棄についての「相当な理由」
   5.消費税法:仕入税額控除をするための帳簿等の「保存」
 第1節 国税通則法:納税者は「更正を予知」していたか?
  東京地判平成24年9月25日(TAINS/Z262-12046)
   1.関係法令(当時)
   2.法令解釈
   3.認定事実
   4.当てはめ
   5.検 討
   6.課税庁の視点
   深読み! 税務調査についての経験則に基づく判断 
 第2節 所得税法:所得区分をめぐる事実認定の深度
  東京地判平成25年4月26日(TAINS/Z263-12210)
   1.関係法令
   2.法令解釈
   3.認定事実
   4.当てはめ
   5.検 討 16
   深読み! 労働事件における事実認定 
   6.課税庁の視点
   深読み! 本判決の意義 
 第3節 相続税法:米国の合有不動産を「取得」した時期
  東京高判平成19年10月10日(TAINS/Z257-10797)
   1.関係法令(当時)
   2.法令解釈
   3.カリフォルニア州法
   4.判 断
   5.検 討
   6.課税庁の視点
   深読み! 通達や実務との整合性 
 第4節 法人税法:寄附金認定されない債権放棄についての「相当な理由」
  東京地判平成27年2月24日(TAINS/Z265-12606)
   1.関係法令等
   2.法令解釈
   3.認定事実・当てはめ
   4.検 討
   5.課税庁の視点
 第5節 消費税法:仕入税額控除をするための帳簿等の「保存」
  東京高判令和2年8月26日(TAINS/Z270-13441)
   1.関係法令(当時)
   2.法令解釈
   3.認定事実
   4.当てはめ
   5.検 討
   6.課税庁の視点

著者紹介

梅本 淳久(うめもと あつひさ)
[プロフィール]
デロイト トーマツ税理士法人
テクニカルセンター マネジャー

元国税審判官・公認会計士。米国公認会計士。司法書士試験合格。
デロイト トーマツ税理士法人に入社後,税務申告業務,国際税務コンサルティング業務を経験し,現在は,法令解釈や判例分析に基づく相談業務や教育研修業務に従事している。民間専門家として,国税審判官(特定任期付職員)に登用され,審査請求事件の調査・審理を行った経験を有する。
京都大学理学部卒。

[主な著作]
『詳解 役員給与税務ハンドプック』(中央経済社)
『判例に学ぶ 税法条文の"実践的"読み方』
『子会社株式簿価減額特例一国際的な配当をめぐる税務』
『新版【法律・政省令並記】逐条解説 外国子会社合算税制』
『【法律・政省令並記】逐条解説 外国税額控除~グループ通算制度・外国子会社合算税制対応~』
『詳解 有利発行課税』
『[処分取消事例]にみる重加算税の法令解釈と事実認定』
『事例と条文で読み解く 税務のための民法講義』(以上,ロギカ書房)
『新版 詳解 グループ通算制度Q&A』(清文社,共著)
『否認事例・裁判例からみた 消費税 仕入税額控除の実務』 (中央経済社,共著)
『第10版 Q&A 事業承継をめぐる非上場株式の評価と相続対策』(清文社,共著)
『国際課税・係争のリスク管理と解決策』(中央経済社,共著)
『詳解 タックス・ヘイブン対策税制』(清文社,共著)

【税務専門誌への寄稿記事】
「通達•Q&Aの要点を一挙に押さえる 令和元年度 外国子会社合算税制の改正詳解」税務弘報67巻10号(中央経済社)
「外国法を準拠法とする契約に係る税務上の取扱い[1]~[3]」月刊国際税務38巻12号~39巻2号(国際税務研究会)