中小企業金融政策の理念―金融円滑化法終了の先に希望は見えるか
- 書籍品切れ中
- 本の紹介
- 2013年3月に金融円滑化法が終了し、多くの中小企業は窮地に立たされる。本書では、この返済猶予の特例措置を題材に、中小企業金融政策や金融機関のあるべき姿を論じる。
目次
中小企業金融政策の理念
—金融円滑化法終了の先に希望は見えるか
目次
はじめに
第1章 返済猶予の特例措置は継続すべきであるか
1 返済猶予について朝日新聞などが書いたこと
⑴ 朝日新聞の社説「返済猶予 亀井大臣に再考を求める」
① 返済猶予についての朝日新聞社説の反応
―朝日新聞社説は,返済猶予を元金だけでなく,
利息も払わないことだと考えた―
② 銀行取引にとっての利息を支払うことの意味
⑵ 日本経済新聞の調査結果
―「返済猶予」を申し込む企業の状態―
⑶ 「返済猶予」の措置で,倒産会社は増えるだろうか
―「返済猶予後」の倒産は増加し,銀行は大変なこととなるか―
2 中小企業と銀行取引,事実と経過
⑴ 第二次世界大戦後の第一世代の時代,
なぜ銀行取引が大事だったか
⑵ バブルがはじけて,始まった第二世代の時代の混乱
3 平成の金融危機と金融庁
⑴ 平成の金融危機と「金融再生トータルプラン」
⑵ 「金融検査マニュアル」による信用格付,債務者区分
① 債務者区分とは
② 債権分類
4 「返済猶予」の位置付け
⑴ 返済猶予は2013年春で打切り?
―なぜ打切りとしなければならないのか―
① 問題は,「貸出条件緩和債権」=「要管理先」としたこと
② 返済を猶予することは,本当に大変なことか,
大きな問題なのだろうか
③ 「中小の再生支援急ぐ 不良債権化の恐れ 地銀に26兆円」
と報じた日本経済新聞
⑵ 事態がより悪化したとき,銀行の側にどのような問題が
出てくるのだろうか
⑶ 補 足 58
① 「返済猶予」の状態とキャッシュ・フロー計算書
② 返済を猶予された元金は,最終的にどうなるか
第2章 さまざまな見解の基礎にある時代の風潮
―中小企業の見方,また,時価,貸借対照表を
重視する会計―
1 その背景にあること,時代の風潮となっていたこと
⑴ 中小企業政策の前提,中小企業をどうみるか
① ゾンビ企業ということ
② 中小企業は,大企業に比べ,効率は悪いのであろうか
⑵ BIS規制と格付
2 背景にある会計学の潮流
―時価主義,貸借対照表重視と損益計算書軽視―
⑴ ある銀行の審査部長の見方
⑵ 再び貸借対照表重視ということの意味
⑶ 損益計算書は企業活動を示していないか
⑷ 損益計算書とキャッシュ・フローの関係
第3章 企業を生かす,企業の再生
1 企業再生
⑴ 業況がさらに悪くなったときに,用意されていること
⑵ 「私的整理ガイドライン」の中味
2 企業再生の経済政策
⑴ 中小企業政策としての企業再生の位置付け
⑵ 企業再生の現状での問題点
3 銀行の役割,銀行のあるべき姿
⑴ その技能の活用
⑵ 審査能力という問題
⑶ この方向は正しいのだろうか
⑷ コストの問題
⑸ 補足―スコアリングについて―
⑹ 近畿大阪銀行の例
4 あるべき中小企業政策としての金融政策
⑴ 国,県・市町村での政策の整合性と役割分担
⑵ 保証協会保証という仕組みの問題
⑶ 制度の中味の問題
⑷ 中途半端な政策,思い切りの悪さを示す,その事例
① 第三者の保証人は求めない。しかし,その分金利は高くする
② 資本性劣後ローンの条件
おわりに
付録A 運転資金について
付録B 売上が減少するとき,運転資金は少なくて済むか
付録C キーワード解説
著者プロフィール
林 憲昭(はやし としあき)
中小企業診断士,J-MCMC(全日本能率連盟マスター・マネジメント・コンサルタント),有限会社林コンサルタント代表。横浜国立大学経済学部卒業,同大学院経営研究科修士課程修了。
中小企業金融公庫,コンサルタント会社を経て独立。
産業能率大学講師(非常勤1996年〜2006年)。
著書:
『税理士と社長のための経営数字にもっと強くなる本』(中央経済社),
『やさしくわかる経営分析』
『経営分析の視点からみる連結決算書の読み方・使い方』(日本実業出版社)他。