配当政策とコーポレート・ガバナンス―株主所有権の限界
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- 株主と経営者は、本来どういう関係であるべきなのか? 実証研究をもとに、企業統治の手段たる配当政策の意味を考察し、従来のエージェンシー理論への課題をも提起する。
目次
配当政策とコーポレート・ガバナンス
株主所有権の限界
目次
はじめに
第1章 問題提起と仮説の概要
1−1 本書の視点
配当に対する視点
コーポレート・ガバナンスに対する視点 ……ほか
1−2 本書が取り組むテーマと仮説の概要
本書が取り組むテーマ
問題の発端―資本依存から経営者依存へ ……ほか
1−3 本書の意義と構成
本書の意義
本書の構成
第2章 ファイナンス理論からのアプローチ
2−1 依拠する理論の所在
2−2 企業価値最大化理論の背景
企業とステークホルダーからの出発
完全競争メカニズムの前提 ……ほか
2−3 株主の利益かステークホルダーの利益か
株主所有権とステークホルダー理論
株主利益と厚生経済の関係 ……ほか
2−4 組織の経済学とコーポレート・ガバナンス
限定合理性から効用最大化へ
組織の経済学への発展
2−5 エージェンシー理論
エージェンシー関係とステークホルダー
エージェンシーコストの要素 ……ほか
2−6 所有権理論
所有権の定義
株主が所有しているもの ……ほか
2−7 取引費用理論
取引費用理論における企業の役割
取引費用節約のためのガバナンス
第3章 外部株主モデルと固定的配当政策の合理性
3−1 配当政策と組織構造の関係
3−2 外部株主モデルによるガバナンス構造の考え方
外部株主モデルとは
経営者の自由裁量が達成する経営効率性 ……ほか
3−3 「人的資産」概念に対する今後の課題
第4章 配当政策研究の系譜
4−1 経営者の意思と配当政策
4−2 配当割引モデルから配当無関連命題へ
ゴードンモデルと企業価値
MM理論の登場と配当のパズル
4−3 税金と配当
無配が最適な配当政策
配当の顧客効果モデル ……ほか
4−4 株式の取引コストと配当
インカムゲインかキャピタルゲインか
主な実証的研究
4−5 市場の規制と配当
4−6 情報の非対称性と配当
配当のシグナリングモデル
ペッキングオーダー理論と配当政策 ……ほか
4−7 不完備契約と配当
フリーキャッシュフロー仮説
成熟性仮説 ……ほか
4−8 配当のパズル
補章 日本の配当政策とコーポレート・ガバナンスの歴史
補−1 数値で見る日本企業の配当政策
日本企業のこだわり
有配企業と無配企業 ……ほか
補−2 第二次世界大戦に影響を受けた日本の企業理念
硬直的と言われた日本の配当政策
株主主権が実現していた1900年代初頭の日本企業 ……ほか
補−3 日本型配当政策の実態と背景
戦中戦後を通して実施された配当規制
なぜ一割配当だったのか ……ほか
第5章 経営者自己抑制仮説の実証
5−1 問題意識―利口な経営者はどのように振る舞うのか
実証の目的
問題の所在 ……ほか
5−2 仮説の設定と理論的フレームワーク
仮説が依拠する理論―情報の非対称性とエージェンシーコスト
自己抑制的配当政策の類型
5−3 リサーチデザイン
分析対象とデータセット
被説明変数:配当変化率の定義 ……ほか
5−4 分析結果・119
基本統計量
2001年から2005年の5年年率分析 ……ほか
5−5 まとめ
第6章 経営能力評価仮説の実証
6−1 問題意識―利口な株主はどのように振る舞うのか
6−2 仮説の設定と理論的フレームワーク
仮説が依拠する理論―外部株主モデル
経営能力評価仮説の考え方
6−3 リサーチデザイン
外部株主とベンチマーク株主の特定
実証方法の考え方 ……ほか
6−4 分析結果
基本統計量
モデル式の推定結果と考察
6−5 まとめ
第7章 特殊性資産評価仮説の実証
7−1 問題意識―利口な株主は何を評価するのか
7−2 仮説の設定と理論的フレームワーク
仮説が依拠する理論―特殊性資産に対する株主所有権
特殊性資産評価仮説の考え方
7−3 リサーチデザイン
変数の決定
定式化 ……ほか
7−4 分析結果
基本統計量
モデル式の推定結果と考察
7−5 サンプルの拡大(ロバストネスチェック)
全上場企業を対象とした分析
人件費に着目したパラメータの導入
7−6 まとめ
第8章 まとめと今後の展望
8−1 発見事項の要約
8−2 本書の主張
8−3 今後の展望
本書の課題と展望
日本企業のコーポレート・ガバナンス―新たな展望に向けて
索 引
著者プロフィール
宮川 壽夫(みやがわ ひさお)
大阪市立大学大学院経営学研究科・商学部准教授
1960年 愛媛県生まれ。
筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士後期課程修了。
博士(経営学)。
野村證券株式会社,米国トムソンファイナンシャル・コンサルティンググループ,野村證券株式会社IBコンサルティング部(現IBビジネス開発部)を経て,
2010年4月に大阪市立大学大学院経営学研究科・商学部専任講師として着任。
同年10月准教授,現在に至る。
〈主要論文〉
「投資家のパワーと経営者裁量とのコンフリクト」『會計』,2011年5月
「株主による経営能力評価と配当政策」(共著)ICS Working Paper Series,2011年3月
「粘着的配当政策の合理的背景とその実証」『証券経済研究』,2010年6月
「日本における安定配当政策の意義と歴史的背景」『資本市場』,2010年5月
「企業の経営能力と配当政策」『経営研究』,2010年5月