医療の組織イノベーション―プロフェッショナリズムが移植医療を動かす
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- 世界38カ国にわたるアンケート調査から、医療専門職のプロフェッショナリズム醸成が臓器移植の増加に効果があることを解明。経営学のアプローチで社会問題の解決に挑む労作。
目次
医療の組織イノベーション
プロフェッショナリズムが移植医療を動かす
目次
移植医療への新しいアプローチ(大島伸一)
研究成果を実践へ(高原史郎)
スペインから日本の皆様へ(グロリア・パエス)
経営学の社会的意義(上林憲雄)
第Ⅰ部 移植医療を考える
第1章 なぜ,移植医療を経営学で分析するのか
1.1 移植医療の何が問題なのか
1.2 なぜ経営学を志したのか
1.3 本書の分析視角
1.4 本書の構成
第2章 移植医療の現況
2.1 移植医療の意義
2.2 臓器移植の歴史と現在の成績
2.3 臓器移植を必要とする人々
2.4 世界の臓器提供数と日本の位置づけ
第3章 臓器提供の現況
3.1 欧州諸国を対象としたアンケート調査の概要
3.2 脳死とは
3.3 臓器移植に関する法律
3.4 臓器提供に関する制度:臓器提供方式
3.5 臓器提供のプロセス
3.6 臓器提供に関わる組織
3.7 臓器提供に関わる人材
3.8 小括
第Ⅱ部 日本の臓器提供をどうしたら増やせるのか
第4章 諸外国における臓器提供増加への取り組み
4.1 ドナーアクション®:院内プロセス改善の総合プロトコール
4.2 TPMトレーニングコース/ETPOD:プロフェッショナルの
養成プログラム
4.3 スパニッシュモデル:プロフェッショナルへの動機づけと国家の
総合戦略
4.4 フランス:臓器提供は国家の優先事項
4.5 ベルギー:家族の臓器提供拒否率を減少させるしくみづくりと
ドナーアクション®の有効活用
4.6 シンガポール:悲嘆ケアのプロフェッショナルを育成
4.7 ドイツ:臓器提供病院へ多くのベネフィットを提供する
4.8 成功事例の共通項:院内Co.の配置と医療スタッフへの教育
4.9 ドナーコーディネーター資格認定制度:プロセスの質を高める
しくみ
4.10 欧州諸国の新しい動き:国の強いコミットメントを国民に示す
4.11 小括
第5章 臓器提供に影響を及ぼす因子の分析
5.1 臓器提供に対する考え
5.2 分析の視点
5.3 宗教:主な宗教は臓器提供を否定していない
5.4 文化:少なからず影響を及ぼしている
5.5 知識:理解不足,誤解が臓器提供への否定的な意識に
つながる
5.6 利他的な考え:誰かのために役にたちたいという思いが臓器
提供に肯定的に働く
5.7 規範的な考え:人は家族の考えに左右される
5.8 関与の程度:深い関与が意思表示への推進力となる
5.9 意思表示手段へのアクセス:関与が高い時に意思表示手段が
あることが重要
5.10 法律・制度:臓器摘出要件は明らかに影響を及ぼす
5.11 国家体制:国家体制の整備と予算の確保が重要
5.12 病院内の体制:病院内プロセスの分析,改善案の策定・実行
が重要
5.13 病院内の人材:継続的な教育・訓練によるプロフェッショナル
の養成が重要
5.14 ドナー家族の意思決定:オプション提示者とその行動が鍵
5.15 欧州諸国を対象としたアンケート調査
5.16 どの因子が最も影響を及ぼすのか
5.17 なぜプロフェッショナリズムなのか
第Ⅲ部 プロフェッショナリズムを考える
第6章 プロフェッショナリズムに関する理論的考察
6.1 プロフェッションの定義
6.2 プロフェッショナルとプロフェッショナリゼーション
6.3 エキスパート
6.4 プロフェッションの形成過程
6.5 プロフェッショナリズムの定義と次元
6.6 医療におけるプロフェッショナリズム
6.7 プロフェッショナリズムの醸成
6.8 プロフェッショナリズムと成果
6.9 小括
第7章 移植医療にあてはめて考える
7.1 院内コーディネーターのプロフェッショナリズムとは:
分析枠組みの構築,仮説の導出
7.2 院内コーディネーターへのインタビュー
7.3 スペインのコーディネーターへの予備テスト
7.4 プロフェッショナリズムに影響を及ぼす内的・外的報酬
7.5 院内コーディネーターの要件と成果を生み出す
プロフェッショナリズム
第Ⅳ部 プロフェッショナリズムを醸成する
第8章 プロフェッショナリズムの測定尺度開発と醸成のための
組織施策
8.1 質問票の設計
8.2 調査対象
8.3 アンケート調査票の配布・回収
8.4 アンケート調査の分析方法
8.5 インタビュー調査方法
8.6 調査標本の回収率,およびバイアスについての検討
8.7 分析対象の属性
8.8 プロフェッショナリズム次元の特定
8.9 プロフェッショナリズムの各次元と属性の関係
8.10 2次因子分析による上位概念の検討
8.11 プロフェッショナリズムの各次元と成果指標との関係
8.12 各次元を醸成させる組織施策についての検討
8.13 日本の現状
8.14 分析結果の日本への適用
8.15 分析結果の世界への適用
8.16 プロフェッショナリズムとその醸成の全容
8.17 小括
第9章 プロフェッショナリズムが移植医療を動かす
9.1 本書を振り返って
9.2 「備わる」プロフェッショナリズムと「育てる」
プロフェッショナリズム
9.3 プロフェッショナリズムは組織が育てる
9.4 プロフェッショナリズムを測る国際的なものさし
9.5 『医療の組織イノベーション』の含意
9.6 日本の臓器提供増加に向けての提言
9.7 今後の課題
おわりに
参考文献
索 引
著者プロフィール
瓜生原葉子(うりゅうはら ようこ)
1989年静岡薬科大学薬学科卒業後,外資系製薬企業(ノバルティスファーマ株式会社,日本イーライリリー株式会社)に20年間勤務し,臨床開発,マーケティング,広報,医療政策に従事。
ノバルティス・スイス本社在職中,欧州の臓器提供推進への取り組みを研究し,日本に効果的なプログラムを導入したことをきっかけに,医療における社会問題解決のため経営学を志す。
帰国後,神戸大学大学院経営学研究科(専門職学位)に進学し,2011年同研究科博士後期課程修了,博士(経営学)を取得。
社会問題の解決に必要なエビデンスを作り,医療現場と社会の橋渡しをする存在でありたいと,神戸大学大学院経営学研究科研究員としてプロフェッショナリズムや製薬企業の研究を続けると同時
に,大阪大学大学院医学系研究科博士課程に入学し,経営学と医学の両分野で研究を行っている。
人的資源管理,医療マネジメント,製薬企業の戦略・マーケティングなどを専門とし,現在の研究テーマは,プロフェッショナリズム,臓器提供の増加と質の向上を目指した社会システムの構築,製薬企業の価値向上に寄与する戦略的CSR
など。
- 担当編集者コメント
- 本書が産経新聞(2月5日)の書評で紹介されました。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120205/bks12020512380013-n1.htm