制度変化の会計学―会計基準のコンバージェンスを見すえて
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- 近年の会計制度の大きな変化はどうすれば整合的に説明することができるか。比較制度分析の手法を援用し、市場の事実と相関しない会計の自律的な変化の本質にアプローチする意欲作。
目次
制度変化の会計学
―会計基準のコンバージェンスを見すえて
目次
第1章 研究の課題と方法
? はじめに
? 研究の課題
1. 会計における構造と機能
2. 会計の変化の自律性
? 研究の方法
1. 比較制度分析における制度
2. 比較制度分析を援用した会計研究の可能性
? 本書の構成
第2章 原価主義と時価評価
? 時価評価の領域拡張と原価主義の揺らぎ
? 生成期会計諸原則における原価主義の構造と論理
1. 原価主義の2つの局面と2つの論拠
2. 原価主義の規範的機能としての利益測定
3. 原価主義の論拠と資産評価
? 資産負債アプローチにおける時価評価の構造と論理構成
1. 資産負債アプローチの2つの理論的源流
2. 用役可能性説にもとづく実態表示思考の意義と問題点
3. 意思決定有用性アプローチにおける2つの理論的含意
? 残された課題
第3章 利益概念と情報価値
? はじめに
? 利益概念の二元化=非連携問題の発生と展開
? 会計の本質的機能としての実現利益の決定
? 企業行動としての会計行動と「経営者の意図」の情報価値
? おわりに
第4章 アメリカにおける利益測定論の展開
―1960年代までの実現概念の変遷を手がかりとして―
? はじめに
? 伝統的実現概念の確立
―1940年序説(Paton and Littleton[1940])―
? 資産・負債の認識規準としての実現の提示
―1957年改訂会計原則(AAA[1957])―
? 認識規準としての実現の否認
―1962年会計原則試案(AICPA[1962])―
? 収益認識規準としての実現への回帰
―1964年委員会報告(AAA[1965])―
? 実現概念変遷の理論的含意と現代的意義
1. 実質優先主義の萌芽と展開
2. 1964年委員会報告の勧告をめぐる2つの解釈
? おわりに
第5章 ASBJ概念フレームワークにおける構造と機能
? はじめに
? 考察の視点と論点の整理 ―会計における構造と機能―
1. 会計の構造
2. 会計の機能
? 「首尾一貫した理屈」と純利益の重視
? 純利益重視を支持する本質的概念としての有用性
? 純利益概念とその位置づけの普遍性
? 2つの理屈の並存理由と関係
1. 2つの理屈の並存が生じた理由
2. 2つの理屈の並存の可能性
3. 2つの理屈の関係
4. 討議資料の制度的性質
? おわりに
第5章補論 比較制度分析からみた内的整合性の意義
? はじめに
? 限定合理性と制度の役割
? 制度的補完性と制度変化の可能性
? おわりに
第6章 業績報告と利益概念の展開
? はじめに ―問題の所在―
? 業績報告プロジェクトの経緯と概要
1. FASB/IASB共同プロジェクト発足までの経緯
2. 共同プロジェクトにおける包括利益一元化論の反映
? 利益概念二元化の経緯―アメリカのケースを手がかりとして―
1. 1957年改訂会計原則(AAA[1957])
―用役可能性説の提唱と利益概念二元化の萌芽―
2. 1962年会計原則試案(AICPA[1962])
―用役可能性説の徹底と包括利益一元化への指向性―
3. 1964年委員会報告(AAA[1965])
―利益概念二元化か非連携かの二者択一的選択―
4. FASB概念書第6号(SFAC, No.6, 1985)
―利益概念二元化の確定と意思決定有用性アプローチとの
統合―
? 包括利益一元化論の論理構成
―IASBのケースを手がかりとして―
1. G4+1特別報告(G4+1[1998])およびG4+1方針書
(G4+1[1999a])
―業績報告プロジェクトにおける包括利益一元化論の嚆矢―
2. IASC原則書草案(IASC[2001])と2002年業績報告原則
―包括利益一元化論にもとづく原則書様式の提示―
3. IASCディスカッションペーパー(IASC[1997])
―公正価値に基礎をおく諸原則の提示―
4. JWGドラフト基準(JWG[2000])
―包括的公正価値モデルの提唱―
? 主要論点の総括的検討
1. 利益概念二元化の発生要因
2. 包括利益一元化論の論理構成
3. 包括利益一元化論と意思決定有用性アプローチの統合
4. 問題点の検討
? おわりに―業績報告プロジェクトの現段階と新たな展開方向―
1. 純利益と包括利益の並列開示と純利益の位置づけ
2. 2つの業績報告書様式の選択適用
3. 業績報告の今後の展開
第7章 会計制度の形成プロセスと進化の可能性
? はじめに
? 基本的事実の確認―会計研究における実証研究の位置―
? 経験的証拠とルール設定
1. キャッシュ・フローと会計利益
2. 包括利益と純利益
3. 監査人の独立性
? ルール設定の特徴と基本パターン
1. ルール設定を主導してきたもの
2. 信念に依拠したルール設定の意義
3. ルール設定の基本パターンと日本の対応戦略
? 信念の形成メカニズムへの間接的接近
1. 信念の形成メカニズムをめぐる考察の無限後退
2. 単純明快な主張と市民の限定合理性
3. 比較制度分析に依拠したより一般的な説明
? 会計の制度進化の可能性
1. 進化ゲームにもとづく進化メカニズムの記述
2. 会計問題への適用
3. 現実の会計問題にさらに引き寄せた考察
4. パレート劣位から抜け出すための条件
5. 検討の留意事項
? おわりに ―会計研究へのインプリケーション―
第7章補論 会計基準のコンバージェンスと日本の対応戦略
? はじめに
? 予備的考察 ―会計システムの2類型―
? コンバージェンスの展開過程の理論分析
1. 事前の行動調整をしない場合の均衡解
2. 事前の行動調整をする場合の均衡解
? おわりに ―わが国の今後の課題―
1. 隣接諸制度の同時的改革の必要性
2. 国際機関への関与の強化の必要性
第8章 研究の総括と展望
参考文献
索 引
著者プロフィール
藤井 秀樹(ふじい ひでき)
1956年 福岡県生まれ
1978年 京都大学経済学部卒業
1984年 京都大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得
1984年 近畿大学商経学部講師,助教授,
京都大学経済学部助教授を経て
1997年 京都大学博士(経済学)
1998年 京都大学大学院経済学研究科教授,現在に至る。
1999年 マンチェスター大学客員教授(〜2000年)
2004年 パリ・ドフィーヌ大学招聘研究者
2004年 税理士試験委員(〜2006年)
現在,日本会計研究学会評議員,会計理論学会理事,
非営利法人研究学会常任理事,公益事業学会理事など。
主要著作等
『現代企業会計論』森山書店,1997年(日本会計研究学会太田・黒澤賞)。
『GAAP/FASAB公会計の概念フレームワーク』(監訳)中央経済社,2003年ほか。