- 本の紹介
- 会計測定の目的を投資意思決定有用性に置く時価志向の流れと、株価と会計数値の連関を探る実証志向の会計研究に対し、問題点を指摘するとともに市場社会における会計の重要性を論究。
目次
会計測定の再評価
目次
序章 本書の目的と構成
1 本書の問題意識
2 本書の構成
3 本書の読み方
第1部 企業・資産評価と会計
第1章 企業価値評価における会計測定の相対性
1 無益で有害な会計数値?
2 会計データは有用な情報(の1 つ)にとどまるのか
3 残余利益概念の再発見
4 配当は利益に優越するか
5 残余利益モデル:簡単な数値例
6 資本コスト一定の場合の残余利益モデル
7 資本コストが変動する場合の残余利益モデル
8 割引因子合計を用いた残余利益モデル
9 残余利益モデルの一種としてのEVA
10 会計数値「意見」の配当・キャッシュフロー「事実」に対する
優位性
11 座標としての複式簿記会計
12 企業価値推計と会計測定の相対性
第2章 株価倍率とファンダメンタル・バリュー
1 株価倍率
2 サステナブル成長率
3 資本コスト・純利益成長率一定の場合の株価倍率
4 ROE・純利益成長率一定の場合の株価倍率
5 変動する資本コストの意味
6 変動する資本コストの下でのPER
7 変動する資本コストの下でのPBR
8 資本コスト一定の場合との比較
9 残余利益とファンダメンタル・バリュー
10 残余利益とPER・PBR
11 資本コスト変動と株価倍率
12 株価倍率の理論的妥当性と会計に求められるもの
第3章 会計情報を用いた資産評価モデル
1 残余利益概念を用いた資産評価モデル構築
2 経済・会計データ対数線形化の必要性
3 対数線形残余ROE モデルの導出
4 対数線形残余ROE モデルの定常性
5 逐次代入による対数線形残余ROE モデル書き換え
6 投資家の予測(期待)値としての企業価値
7 資産評価モデルとしての残余ROE モデル
8 対数線形残余ROE モデルにおけるリターン決定三要素
9 CAPMの復習
10 CAPMのパフォーマンス
11 資産評価理論と矛盾する会計モデル
12 ファーマ・フレンチ・モデル
13 投資の最終目的と資産評価理論
14 ベータ・モデルとの同値性
15 残余ROE モデルとベータの分解
16 分解されたベータの推計
17 グッド・ベータとバッド・ベータ
18 資産評価理論における会計情報の重要性
第4章 会計データの時系列特性とオルソン・モデル
1 実証研究と統計的枠組み
2 確率的要約アプローチ
3 統計モデルへの制約としての理論モデル
4 オリジナルのオルソン・モデル
5 オルソン・モデルの統計的問題点
6 データ適合的なオルソン・モデル
7 資産評価モデルとの整合性
8 理論が測定の先を行く可能性
第5章 効率的市場と会計基準
1 会計規制強化は時代に逆行?
2 「正しい」会計数値は存在するか
3 利益に近いのは学力か身長か
4 最適会計基準不可能性定理
5 会計情報の内生性と処理コスト
6 規範研究から実証研究へ
7 会計基準と価値関連性研究
8 会計基準とイベント研究
9 効率的市場での会計基準改善
10 合理的期待形成と政策の不存在
11 市場から学ぶことの可能性
12 会計情報の(非)重要性
13 コップは半分空(あるいは半分残っている)
14 業績評価における発想の転換
15 会計測定へのレクイエム?
第2部 市場社会と会計
第6章 根拠なき会計危機論と社会的事実としての会計
1 会計制度の危機?
2 涅槃のセカンド・ベストは浮世のファースト・ベスト
3 決算操作の効用
4 不良債権論の怪
5 不透明な米国の株式持ち合い
6 サブプライム問題と企業の社会的責任論の責任
7 パングロス的最適論の呪縛
8 社会的事実としての会計現象
9 存在論的主観・客観と認識論的主観・客観
10 共同志向性・機能付与・構成的ルール
11 制度的事実と言語の必要性
12 制度的事実としての言語の自己言及性
13 制度的事実とバックグラウンド
14 社会的事実論の会計への適用に向けて
第7章 経済実体を作り出す言語としての会計
1 制度的事実としての会計とエージェンシー理論
2 会計数値を媒介とする制度的事実
3 制度的事実としての会計と計算可能性
4 制度的事実としての会計の原理的必然性
5 制度的事実概念による実現主義再検討
6 制度的事実概念・一般均衡理論・実証研究にもとづくフローの
優位
7 資本コスト変動と会計測定
8 物価水準の変動と相対価格の変化
9 繰延資産の排除と暖簾
10 会計基準設定への示唆
第8章 市場社会のバックグラウンド
1 実測と予測——二種類の会計数値
2 会計基準統一は歴史の必然?
3 欧米に劣る日本基準?
4 ネットワーク効果と基準間競争
5 弾力的基準としての会計基準
6 バックグラウンドとしての会計
7 規則主義と原則主義
8 投資家は大人である
9 市場競争と予算制約
10 市場競争と自然淘汰
11 「たかが」会計
12 最大化に対する予算制約の優位性
13 実現主義という不死鳥
終章 会計——自由を運命づけられた存在
参照文献
索引
著者プロフィール
福井義高(ふくいよしたか)
【経歴】
1962 年京都府生まれ
1985 年東京大学法学部卒業
1988 年カーネギー・メロン大学大学院博士課程修了(Ph.D.)
日本国有鉄道,東日本旅客鉄道株式会社,
東北大学大学院経済学研究科を経て,
現在,青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授