会計基準の整合性分析―実証研究との接点を求めて

米山 正樹

定価(紙 版):3,960円(税込)

発行日:2008/09/19
A5判 / 296頁
ISBN:978-4-502-28860-9

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本の紹介
実証研究全盛の現在、会計基準に関する理論研究の意義と必要性、さらに実証研究との接点について、税効果、退職給付、金融商品、減損、資本会計などを題材に追求する意欲作。

目次


会計基準の整合性分析
目次

序 章 問題の所在
  1 議論の端緒―伝統的な会計研究に残されている改善の余地
  2 本書における主要な検討課題―実証的な手法による会計研究と
     の接点の模索
  3 整合性を問うことの意味―本書におけるもう1つの検討課題
  4 本書の構成
 【補論】伝統的な手法と実証的な手法による会計研究の接点を求める
      ことの意味

第1章 「新たな」真実利益アプローチにもとづく会計研究
 第1節 はじめに
 第2節 「新たな」真実利益アプローチの概略
  1 本書の基本前提―伝統的な真実利益アプローチとの異同点
  2 2つの分析手続
 第3節 会計ルールの体系を支える基礎概念の階層構造
  1 整合性分析の対象となる基礎概念の範囲
  2 階層の具体的な区分例
 第4節 おわりに

第2章 「新たな」真実利益アプローチにもとづく具体的な
     分析手続

 第1節 はじめに
 第2節 会計ルールの構造に関する具体的な分析手法
  1 会計ルールの体系が個別会計基準の新設・改廃を許容した理
     由の解明―整合性を図った基礎概念の特定化
  2 個別会計基準の新設・改廃が会計ルールの体系に及ぼす影響
     の解明
  3 代替的な解釈の列挙
  4 棄却された選択肢との対比
 第3節 会計ルールの貢献に関する具体的な分析手法
  1 構造に関する分析の補完が必要となるケース(1)―
     「ブラック・ボックス」の存在
  2 構造に関する分析の補完が必要となるケース(2)―
     新たな取引や処理の包摂
  3 構造に関する分析の補完が必要となるケース(3)―
     上位概念をも揺るがす環境変化
  4 貢献に関する分析による補完
 第4節 おわりに

第3章 税効果会計と現行ルールの内的な整合性
 第1節 はじめに
 第2節 資産負債法の採用
  1 問題の所在
  2 類似ケースの検討
 第3節 繰延税金資産と繰延税金負債の割引現在価値による評価
  1 問題の所在―割引をつうじて配分される税金費用の経験的な
     意味
  2 繰延税金資産の「財としての特性」
  3 割引を行った場合の損益配分パターン
 第4節 期間差異に該当しない一時差異に係る会計処理
  1 問題の所在―期間差異と期間差異以外の一時差異
  2 米国における歴史的な経緯
  3 一時差異を認識対象とする理由
  4 現行ルールの体系性への影響
  5 会計ルールの体系性に関する議論の総括
 第5節 税効果会計のあり方と情報利用者の反応
  1 税効果会計を適用することの意味
  2 税効果会計の適用範囲と投資家の行動
  3 税率の変更に伴う税効果の調整と投資家の行動
  4 繰延税金資産・繰延税金負債の割引現在価値による評価と
     投資家の行動
  5 小 括
 第6節 おわりに

第4章 退職給付会計と現行ルールの内的な整合性
 第1節 はじめに
  1 問題の所在
  2 本章の基本的な分析視座
 第2節 退職給付費用の内訳区分―意義と問題点
  1 配分期間に係る現行ルールの特徴
  2 配分期間に係る現行ルールの問題点
 第3節 退職給付に係る見積りの修正
  1 現行ルールの概要
  2 見積りの修正を配分計画に反映する必要性と反映方法
  3 会計ルールの体系性に関する議論の総括
 第4節 退職給付に係る会計基準のあり方と情報利用者の反応
  1 外部積立方式において発生主義を採用したことの意味
  2 「グロス展開」の手法にもとづき発生費用をとらえることの意味
  3 数理計算上の差異に係る遅延認識の意味
 第5節 おわりに

第5章 金融商品の時価評価と現行ルールの内的な整合性
 第1節 はじめに―問題の所在
 第2節 投資成果の獲得手段に関する経営者の選択と業績評価―
       継続的な時価評価の導入が求められた理由
  1 保有目的による会計処理の使い分け―金融商品会計基準にみ
     られる最大の特徴
  2 経営者が実際に選択した手法にもとづく業績評価―会計処理を
     使い分ける理由
  3 会計ルールの体系における「実際に採択した手法の重視」という
     考え方の位置づけ
  4 小 括
 第3節 経営者が実際に採択した手法を尊重することで付与される
       利益情報の特性
  1 想定可能なもう1つの選択肢―機会費用に着目した全面時価
     会計
  2 「経営者が実際に採択した成果獲得手段にもとづく業績評価」と
     全面時価会計との異同
  3 全面時価会計が意味を持ちうる状況
  4 経営者が採択した成果獲得手段に着目することの意味
 第4節 おわりに

第6章 固定資産の減損処理と現行ルールの内的な整合性
 第1節 はじめに―問題の所在
 第2節 減損処理の論拠と導入の影響―会計ルールの構造に関する
       分析
  1 「減損会計基準」による減損処理の論拠―償却不足額の修正
     手続との異同点
  2 減損処理の導入が会計ルールの体系に及ぼした影響
 第3節 投資家による将来キャッシュフローの予測と固定資産の
      減損処理
  1 投資家への貢献を考える場合の着眼点―減損処理の将来に
     おける期間損益への影響
  2 減損以降に計上される期間利益が意味を持ちうる状況
  3 減損情報をより有効に活用するために必要な利益情報の区分
     表示
 第4節 おわりに
  1 要 約
  2 本章をつうじて明らかになった「今後の検討課題」

第7章 資本会計に関する基本的な視座
 第1節 はじめに―問題の所在
 第2節 資本と負債の区分に関する既存の議論とその問題点
  1 伝統的な着眼点とその問題点
  2 「予備的見解」の貢献と限界
 第3節 残余請求権者とその境界
  1 投資の成果に関する残余の(最劣後の)請求権者を特定化する
     必要性
  2 残余請求権者となりうる主体
  3 資本と関連項目に係る基本的な測定規約―同一クラスに属する
     資金提供者間における富の移転と利益測定
 第4節 負担しているリスクの変化が見込まれる場合への対応
       ―デット・エクィティ・スワップを素材として
  1 額面振り替え―債務の発生から株式の交付までを一体の取引と
     みる場合の会計処理
  2 時価振り替え―債務の償還と新株発行による償還資金の調達を
     擬制する「独立処理」
  3 2つの事実認識の対比―会計ルールの体系性に関する分析を
     つうじて
 第5節 利益情報の貢献に関する分析と資本会計のあり方
       ―結びに代えて
 【補論】資本とみなされなかった貸方項目の(詳細な)区分表示に
      ついて

終 章 総括と展望
 1 第3章から第7章までの要約
 2 ある会計ルールの体系から導かれてくる利益情報の貢献に関する
    議論の総括
 3 新たな事実認識にもとづく整合性分析に関する議論の総括

 索 引

著者プロフィール 米山 正樹(よねやま まさき)
1989年 東京大学経済学部卒業
      東京大学大学院経済学研究科進学
1995年 学習院大学経済学部専任講師,助教授,教授を経て
1998年 東京大学より博士(経済学)の学位を取得
2005年 早稲田大学大学院会計研究科教授となり現在に至る。

[著書]
『減損会計−配分と評価』(単著,森山書店,2001年)
『財務会計―財務諸表分析の基礎』(共著,有斐閣,1993年)
『金融商品をめぐる米国財務会計基準の動向―基準の解説と検討』(共著,財団法人企業財務制度研究会,1995年)
『減損会計をめぐる論点』(共著,財団法人企業財務制度研究会,1998年)
『会計基準の基礎概念』(共著,中央経済社,2002年)
『個と組織の成果主義』(共著,中央経済社,2003年)
『詳解 討議資料 財務会計の概念フレームワーク』(共著,中央経済社,2005年)




























著者紹介

米山 正樹(よねやま まさき)
[プロフィール]
1989年3月 東京大学経済学部卒業
1995年3月 東京大学大学院経済学研究科第2種博士課程 単位取得退学
1995年4月 学習院大学経済学部専任講師(その後助教授および教授)
1998年12月 博士(経済学)東京大学
2005年4月 早稲田大学商学学術院 大学院会計研究科教授
2012年4月 東京大学大学院経済学研究科教授,現在に至る。
2017年   税理士試験委員(~2019年、2021年~2023年)

[主な著作]
『減損会計-配分と評価』森山書店,2001年
『会計基準の整合性分析-実証研究との接点を求めて』中央経済社,2008年