グローバル化・デジタル革命のインパクト―日系電機の凋落と官民の改革

堀内 英次

定価(紙 版):3,520円(税込)

発行日:2022/02/18
A5判 / 288頁
ISBN:978-4-502-41441-1

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本の紹介
80年代以降急激に進んだ経済のグローバル化・デジタル化が日本経済や企業にどのような影響を与え、官民がどのように対応をしているのか。経済学・経営学視点を交えて解説。

目次

はじめに

第I部 経済のグローバル化と日本経済
第1章 経済のグローバル化とその原動力

 1 経済のグローバル化とその実態
   1.1 グローバル化の恩恵を受ける日本
   1.2 データで見る世界経済のグローバル化
 2 グローバル化の原動力
   2.1 1980年代以降の対外直接投資の拡大とその要因
   2.2 企業の国際展開と多国籍化
   2.3 広がる国際生産・販売ネットワーク
   2.4 国際企業提携の拡大

第2章 国際分業の進展と日本の産業構造転換
 1 日本の対外直接投資の拡大とグローバル化
   1.1 プラザ合意後の円高と対外直接投資
 2 各国の対内直接投資促進策
   2.1 受け入れ国の直接投資優遇策
   2.2 その他の促進政策
   2.3 誘致政策としての地域経済統合
 3 アジアの国際分業の進展と日本の産業構造の変化
   3.1 デジタル化と東アジアでの国際分業の進展
   3.2 国際分業と産業構造の変化
   3.3 経済のサービス化と産業構造の変化

第3章 グローバル化と産業の空洞化
 1 日本の対外直接投資と産業空洞化
   1.1 日本企業の工場立地:国内と海外
   1.2 国内生産の減少と対外直接投資
 2 直接投資は空洞化をもたらすのか?
   2.1 直接投資は空洞化をもたらすか:経済全体への影響
   2.2 直接投資は空洞化をもたらすか:地方への影響

第Ⅱ部 グローバル化・デジタル化と企業間競争
第4章 技術のデジタル化とものづくりへの影響

 1  アナログ技術の時代における日本の国際競争力と日本のものづくり
   1.1 アナログ時代のものづくりと日本的経営
   1.2 アナログ時代のものづくりとイノベーションの特徴
 2 ものづくりのデジタル化と日本の競争優位の喪失
   2.1 技術のデジタル化と設計・製造装置への影響
   2.2 技術のデジタル化と設計思想のモジュラー化
   2.3 モジュラー化とエレクトロニクス製品市場の競争優位

第5章 デジタル化・グローバル化と米国企業の躍進
 1 米国企業の復活と新たなビジネスモデル
   1.1 選択と集中と国際水平分業の活用
   1.2 デジタル機器の水平分業と新興企業の優位性
   1.3 プラットフォームの形成とオープンイノベーション
 2 プラットフォーム・エコシステムの事例
   2.1 インテルの事例:国際標準化戦略と知的財産戦略
   2.2 アップルの事例:エコシステムの形成

第6章 デジタル化・グローバル化とアジア企業の台頭
 1  ものづくりのデジタル化と東アジア諸国のキャッチアップ
   1.1 技術のデジタル化と技術移転
   1.2 東アジア諸国でものづくりが発展した背景
 2  半導体・液晶パネルなどの装置型産業におけるアジア企業の台頭
   2.1 製造装置メーカーの存在とキャッチアップ
   2.2 半導体産業におけるファウンドリの台頭
   2.3 液晶パネルと液晶テレビの生産
 3 パソコン・携帯などの組み立て工程での台頭
   3.1 組み立て工程の変化とキャッチアップ
   3.2 水平分業とEMS/ODMの台頭

第7章 エレクトロニクス市場での日本企業の敗北
 1  携帯,液晶テレビ市場での日本市場のガラパゴス化と総合型・垂直統合型ビジネスモデルの敗北
   1.1 世界市場の拡大と日本企業のシェア喪失
   1.2 デジタル化と日本のビジネスモデルの弱体化
   1.3  携帯電話,パソコン,テレビ市場での日本企業の敗北と撤退
 2 デジタル化の進展と日本企業の遅れ
   2.1 デジタル化時代に適した企業システム
   2.2 日本企業の対応の遅れと日本の企業システム

第8章 リーマンショック以降の日本企業の構造改革
 1 事業の選択と集中とリストラ
 2 組織改革とガバナンス改革
 3  デジタル化・グローバル化に対応するための人事制度改革
 4 イノベーション体制の改革とオープンイノベーション

第Ⅲ部 グローバル経済下の日本の政策改革
第9章 グローバル化・デジタル化の中で発展を続ける先進国

 1 グローバル化,デジタル化で先を行く米国
   1.1 ICT産業の発達
   1.2 シリコンバレーの発展とイノベーション・システム
 2 北欧の積極的労働市場政策とセーフティネットの整備
 3  国家主導のビジネス環境整備で成長を続けるシンガポール

第10章 日本経済の課題とアベノミクスの成長戦略
 1  グローバル化・デジタル化の下での経済システムの構築
   1.1 グローバル化・デジタル化の下で日本に求められる能力
   1.2 求められる政府の発展戦略
   1.3 近年のアベノミクスの成長戦略
 2 アベノミクスの成長戦略:各戦略の背景とその内容
   2.1 日本のイノベーション・システムの改革
   2.2 グローバルなヒト・モノ・カネの誘致
   2.3 経済連携協定の促進
   2.4 産業の新陳代謝の促進1:ベンチャー支援
   2.5 産業の新陳代謝の促進2:規制緩和
   2.6 日本の労働市場改革とセーフティネットの整備

〈事例紹介〉
  日産とルノーの提携
  Googleのアンドロイド携帯プラットフォームによるエコシステムの形成
  TSMCの躍進と日本半導体企業の敗北
  EMSの躍進とホンハイ
  グローバル化,デジタル化とサムスンのキャッチアップ
  グーグルの成長とシリコンバレー
〈解 説〉
  金融のグローバル化と負の側面
  直接投資がもたらすもの
  ものづくりと部門間のすり合わせ
  ものづくりにおけるアナログ技術とデジタル技術
  製品アーキテクチャ:モジュラー型とインテグラル型
  日本企業とイノベーションのジレンマ
  組織構造改革 ―事業部制,カンパニー制から持ち株会社制への移行―
  成長vs公平:大きな政府か小さな政府か?
  規制緩和と市場メカニズム

終わりに

著者紹介

堀内 英次(ほりうち えいじ)
[プロフィール]
帝京大学経済学部准教授
一橋大学経済学部卒業。一橋大学大学院経済学研究科博士課程単位収取得退学。一橋大学博士(経済学)。帝京大学講師,一橋大学COE研究員等を経て,2008年より現職。
専門分野は国際経済学,崩粟政策,産業構造論。

[主な著作]
「日本の産業政策と産業構造の転換について」(郭四志編著『中国経済の新時代』文眞堂,2017年)
「1980年代後半の日米半導体摩擦:米中ハイテク摩擦への教訓」(郭四志編著『米中摩擦下の中国経済と日中連携』,日本評論社,2019年)
“Strategic Technology Transfer through FDI in Vertically Related Markets” (with Jota Ishikawa, The Economic Record, 2008)
“Tariffs and Technology Transfer through Intermediate Product” (with Jota Ishikawa, Review of International Economics, 2009)