還流する地下資金―犯罪・テロ・核開発マネーとの闘い

野田 恒平

定価(紙 版):3,850円(税込)

発行日:2023/12/19
A5判 / 296頁
ISBN:978-4-502-44981-9

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本の紹介
マネロン対策は、単なる金融機関の問題ではなく国際政治を含む広範な領域を射程する。本書は複雑な国際規制の現実を過去の事件史と自身の経験をふまえ平易な表現で解説する。

目次

第1章 地下資金対策序説
1 「マネロン」という言葉の呪縛
2 本書の趣旨
3 地下経済とマネロン罪
4 マネロンの手法
5 金融犯罪成立の序章

第2章 麻薬犯罪と地下資金
1 米国におけるマネロン罪成立
2 日本の麻薬犯罪と暴力団
3 当局に与えられた武器
4 テロ組織・国家的アクターと麻薬

第3章 FATF:その成立とルール・メイキング機能
1 FATFという不可思議な組織
2 設立経緯からの含意
3 FATFのルール・メイキング機能

第4章 FATF:実質的強制力とジレンマ
1 他の国際規範との関係性
2 相互審査と実質的強制力の獲得
3 現在の枠組みへの評価

第5章 官民のバーデン・シェアリング
1 日本の法体系と官民間シェアリング
2 「ウタトリ」という非凡な義務
3 シェアリングの垂直的拡大:義務の範囲
4 シェアリングの水平的拡大:義務を負う業種

第6章 背後にひそむ真の人物を探る
1 終わりなき「仮面舞踏会」
2 ペーパー・カンパニーの支配者
3 黄金パスポートと国籍ロンダリング

第7章 汚職対策とマネロン規制の深い関係
1 米国・反汚職法制の世界的展開
2 開発政策からのアプローチ
3 地下資金対策とリンケージ
4 「体制間競争」としての戦略化

第8章 定義なき「テロ」と闘う米国と世界
1 世界のテロ組織の現状・資金規制の趣旨
2 入口で躓く対テロ政策〜定義問題
3 9・11 が突き動かしたテロ資金規制

第9章 国家自身が生み出すテロ資金
1 テロの国家的支援というパラダイム
2 テロ支援に係る地域主要国の関係性
3 テロ資金のチャンネルと今日的課題

第10章 安全保障の試金石・金融制裁
1 FATFにおける制裁の位置付け
2 国境管理:地下資金対策の盲点
3 米国の単独制裁とドルの地位
4 イラク・国連汚職から生まれたTFS

第11章 マネロンの刑事政策的展開
1 マフィアの街で生まれたパレルモ条約
2 「銀の弾丸」としての犯罪収益剥奪
3 麻薬カルテルの幹部達が恐れる身柄引渡
4 犯罪組織が目を付ける野生動物

終章 デジタル革命と地下資金
1 デジタル時代の地下資金対策
2 二つのゲームチェンジャー
3 地下資金対策から見たCBDC
4 おわりに―発展し続ける地下資金対策

著者紹介

野田 恒平(のだ こうへい)
[プロフィール]
2001年、財務省入省。アジア・欧州の大使館勤務を含め、主に国際関係業務を歴任。
FATF第4次対日審査の政府内取りまとめを経て、2020年からIMF(国際通貨基金)法務局上級顧問として、世界各国のマネロン・テロ資金等対策に携わる。2022年7月より、内閣法制局参事官。
東京大学法学部卒、米国コロンビア大学公共政策学修士、ニューヨーク大学法学修士(国際租税法専攻)取得。

[主な著作]
「逐条解説FATF勧告:国際基準からみる日本の金融犯罪対策」(共編著・中央経済社)