山口大学大学院東アジア研究科 東アジア研究叢書⑦/東アジアのパンデミック―政治・経済学、法制度、観光学の視点から

国立大学法人山口大学大学院東アジア研究科 編著
浜島 清史 責任編集

定価(紙 版):3,080円(税込)

発行日:2024/03/29
A5判 / 164頁
ISBN:978-4-502-49821-3

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本の紹介
コロナ禍が浮彫りにした日本を含む東アジア諸国における制度的課題を、日本はもとよりマレーシア、中国、バングラディシュなど様々な地域から招いた論客とともに検討した。

目次

第1章 コロナ禍の国際シンポジウムによせて─制度と組織
1 コロナ禍シンポジウム(シンポ)と制度・組織論への橋掛け
2 国際シンポジウム2023(本書の基)と制度論への新たな視座
3 これまでのコロナ禍に関するシンポジウムの総括
4 制度論としての総括と経済学的考察の進化
5 むすびにかえて─事例としての山口県と山口大学の取り組み

第2章 COVID-19(コロナ)に伴う日本における人的移動の規制と緩和
1 はじめに─第2章の概要
2 コロナ禍における移動と移動規制に関する先行研究
3 日本におけるコロナ期の人的移動に関する概要
4 日本における人的移動の規制と緩和に関する変遷
5 山口大学における留学生の受け入れ
6 おわりに─第2章のまとめ

第3章 新型コロナウイルス感染症後におけるマレーシアの観光業
1 地球規模でみられた観光産業の成長
2 COVID-19のまん延
3 マレーシアの観光におけるCOVID-19のインパクト
4 オーバーツーリズムからアンダーツーリズムへ
5 前提と期待
6 バーチャル・ツーリズムは普及するのか?
7 COVID-19の影響をマネージする
8 観光の再開─これまで通りのビジネス?
9 COVID-19後の観光ラッシュ
10 前途多難
11 今後の方向性

第4章 日本でのCOVID対策の奇跡の理由─同調圧力への弱さか主体的個人の衛生意識か
1 日本のコロナ対策が本当に奇跡であったかどうか
2 日本人の衛生文化
3 コロナ・ウイルス感染対策になる日本の日常茶飯事
4 日本の衛生文化と視覚中心主義
5 他人の目に触れないプライベート衛生行為
6 日本の衛生行為は特に同調圧力に動機づけられているものではない

第5章 “おねがい”ベース感染症対策の法的な基礎─感染症法の憲法構造を基軸として
1 低い感染水準と小さな法的強制
2 「同調圧力」「自粛警察」は感染制御に有効であったか?
3 感染症法を基軸とする蔓延防止体制に対する簡単な考察
4 きわめて謙抑的な法的強制
5 コロナ対策の現実─2010年尾見提言をめぐって
6 とりあえずの総括と今後の研究課題

第6章 中国における機関の連携─COVID-19(コロナ禍)の対応を事例に
1 はじめに─本章の概要
2 政府機関の相互調整のための規制および規範の背景
3 中国行政法における機関相互の制度的な調整組織 
4 中国行政法における機関調整手続
5 組織的調整と手続的調整の制度的選択

第7章 コロナ災害への対応と人命・経済への影響─バングラデシュの事例
1 はじめに─大災害に対する包括的理解と回復力
2 バングラデシュにおけるコロナと災害対応のメカニズム
3 生活のさまざまな側面におけるコロナの影響
4 考察─社会から疎外された人々の脆弱性と的を絞った政策の必要性
5 結論─脆弱性と回復力(レジリアンス)

第8章 日本のワクチン外交とその影響
1 はじめに─コロナと国際政治
2 日本によるワクチン外交の展開
3 外交資源としてのワクチンの変容
4 東南アジアの対日認識の変化
5 おわりに─人道的目標の達成と戦略的目標の未達成

著者紹介

国立大学法人山口大学大学院東アジア研究科(こくりつだいがくほうじんやまぐちだいがくだいがくいんひがしあじあけんきゅうか)
[プロフィール]
山口大学大学院東アジア研究科は,2001年4月に設立された東アジアをはじめとする国・地域で指導的役割を果たす高度専門職業人を養成する後期博士課程のみの研究科です。現在,「比較文化講座」,「社会動態講座」,「社会システム分析講座」の3つのコースで,数十名の学生・教員が研究と教育に携わっています。修了生の多くが、東アジア各地域の大学や教育機関,研究機関等で活躍しています。

浜島 清史(はましま きよし)