基礎からわかる 国内EPC契約の実務

本郷 貴裕

定価(紙 版):4,950円(税込)

発行日:2025/09/02
A5判 / 352頁
ISBN:978-4-502-54721-8

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本の紹介
国内企業同士のEPC契約の全体像を踏まえ、対価・損害賠償責任・納期延長と追加費用の3つの視点で実務上の留意点を解説。国内と比較して、海外ならではの取扱いにも言及。

目次

第1章 EPC契約とは何か?
1 EPC契約とは?
2 EPC契約の締結までの流れ
3 契約締結時に固定される3つの重要事項
4 受注者によるEPC契約の遂行の流れ
5 EPC契約の特筆すべき特徴
6 EPC契約と建設契約の比較
7 EPC契約をレビューする際に持つべき3つの視点

第2章 契約に関する基本事項~これを押さえれば,契約初心者でも大丈夫!~
1 契約とは? 法的拘束力とは?
2 EPC契約に定められている3つのこと
3 契約と法律の関係

第3章 視点①:対価を適切に得るための契約条件
1 契約金額の決め方①:総価請負契約(ランプサム/Fixed Price)
2 契約金額の決め方②:実費精算契約(コストプラスフィー)
3 総価請負契約のよくある3つの勘違い
4 受注者の仕事(スコープ)
5 対価の支払方法
6 発注者が対価を支払わない場合の手当て① 遅延利息の支払
7 発注者が対価を支払わない場合の手当て② 機能しない同時履行の抗弁権
8 発注者が対価を支払わない場合の手当て③ 作業中止権
9 発注者が対価を支払わない場合の手当て④ 契約解除権と解除後の損害賠償
10 発注者の資金の確認
11 発注者の親会社による保証
12 先行作業のための覚書・仮契約の注意点
13 プロジェクトファイナンスの場合
14 受注者が対価を得られるのは当然か?

第4章 視点②:受注者が不当に責任を負わされないようにするための契約条件
第1 納期遅延

1 納期遅延その①~納期の決め方~
2 納期遅延その②~納期遅延の責任~
3 納期遅延その③~納期遅延の損害賠償の証明と予定損害賠償金~
4 納期遅延その④~予定損害賠償金よりも実際に生じた損害のほうが多いときはどうなるか?~
5 納期遅延その⑤~違約罰と予定損害賠償金~
6 納期遅延その⑥〜予定損害賠償金の算出方法〜
7 納期遅延その⑦~予定損害賠償金の上限~
8 納期遅延その⑧〜工程表の法的拘束力の有無〜
第2 性能未達
1 性能未達と予定損害賠償金
2 最低保証性能
3 性能試験が検収後に行われる場合の注意事項
4 性能未達をごまかしてはいけない
第3 契約不適合責任
1 契約不適合責任その①~契約不適合責任とは?~
2 契約不適合責任その②~契約不適合責任の内容と注意点~
3 契約不適合責任その③~契約不適合責任期間~
4 契約不適合責任その④~契約不適合責任期間の延長~
5 契約不適合責任その⑤~定期検査と契約不適合責任期間~
6 まとめ
第4 第三者の損害
1 第三者の損害について責任を負う者
2 連帯責任とは?
3 発注者と受注者間の責任分担の方法
4 第三者に損害が生じたことで納期に遅れが出る場合の処理
5 海外におけるEPC契約でよく用いられる責任分担の方法
第5 第三者の知的財産権の侵害
1 受注者が第三者の知的財産権を侵害する場合とは?
2 第三者が発注者に請求してくる場合
3 受注者の帰責性の有無
第6 損害賠償責任の制限
1 責任制限条項その①~責任制限条項とは?~
2 責任制限条項その②~責任制限条項の例外~
3 責任制限条項その③~そもそも責任制限条項の適用の範囲外である場合~
4 責任制限条項その④~契約不適合責任に基づく修補にかかる費用と責任上限~
5 責任制限条項その⑤~逸失利益の免責~
6 責任制限条項その⑥~優先順位の明確化~
7 責任制限条項その⑦~不法行為との関係~
8 責任制限条項その⑧~責任上限と逸失利益の免責のどちらか片方だけ定めることを許されたら?~
9 まとめ
第7 受注者の契約違反に基づく契約解除
1 検収前後で解除の効果に差がある
2 なぜ,検収前後で解除の効果が異なるのか?(153頁のA)
3 検収前の解除の場合に受注者が得られる対価の内容は?(153頁のB)
4 検収前の解除の場合に受注者が負う損害賠償責任の内容は?(153頁のC)
5 まとめ
第8 保険
1 損害賠償責任と費用負担をもっと抑えるためには?
2 保険の分類
3 基本補償と特約
4 保険会社の免責事由
5 EPC案件ではどのような事故が生じるのか?
6 EPC契約における保険の種類
7 保険がおりるなら,契約上の責任を引き受けてもよいか?

第5章 視点③:受注者の責めに帰さない事象に対する納期延長・追加費用を得るための契約条件
第1 総論

1 受注者が納期までにプラントを完成させることができない場合の責任
2 納期の延長手続
3 納期遅延によって生じる追加費用の請求
4 クリティカルパス~契約には出てこないが重要な事項~
5 なぜEPC契約では,「納期延長」という概念が必要なのか?
6 日本のEPC契約と海外のEPC契約の最大の違いとそれへの対策
第2 発注者の責めに帰すべき納期遅延
1 発注者の義務違反
2 追加費用の請求
第3 作業中止
1 発注者が自己の都合で受注者に対して工事の中止を求める場合
2 発注者の自己都合による作業の中止が長期間継続した場合
第4 不可抗力
1 不可抗力その①~不可抗力の定義~
2 不可抗力その②~不可抗力の効果~
3 不可抗力その③~不可抗力が長期間継続する場合~
4 工事を続行することが不可能になった場合の処理
第5 危険の負担
1 危険負担の原則的な扱い
2 危険負担の例外的扱い
3 民法の危険負担とEPC契約の危険負担の違い
4 危険負担と不可抗力の違い
第6 仕様変更
1 仕様変更の手続
2 発注者による仕様変更を制限する方法
3 発注者が「仕様変更に該当しない」と主張する場合の対処方法
4 納期を短縮させることの請求
第7 法令変更
1 法令変更が生じた場合の処理
2 規格の変更の扱い
第8 建設サイトの状況
1 建設サイトの地下の情報
2 遺跡が発見された場合
第9 その他の納期延長事由
1 関連工事との調整
2 予期できない事由
第10 急激なインフレーションへの対策
1 インフレ条項(エスカレ条項)
2 エスカレ条項を定める際のポイント
3 エスカレ条項に関する疑問

第6章 その他の重要ポイント
第1 設計図面

1 設計承認
2 発注者による承認後に発見された設計の誤りの責任
第2 検査・試験・検収
1 仕事の途中に行われる検査
2 仕事の完了後に行われる試験(検収のための試験)
3 発注者が追加で求める検査・試験による遅れと追加費用の扱い
4 検収の効果
第3 発注者による自己都合解除権
1 自己都合解除とは?
2 自己都合解除に伴う措置と損害賠償
3 受注者に自己都合解除権はない
第4 EPC契約における契約解除の整理
1 原状回復
2 解除に伴う損害賠償請求
第5 一般条項
1 完全合意条項
2 権利義務の譲渡禁止
3 準拠法
4 紛争解決条項
5 裁判以外の紛争解決方法~調停と仲裁~

第7章 下請契約の重要ポイント
1 下請けの選定方法
2 下請けに起因する契約違反の責任
3 下請けを変更する場合の処理

第8章 「この案件は,うちでは,とてもじゃないがやりきれない」と感じたときの対処法
1 契約条件ではどうにもできないと認識する
2 なぜ,その案件を受注しなければならないのか?を冷静に考える
3 企業の至上命題とは何かを考える
4 できない理由をしっかりと説明しよう
5 挑戦するときは,最低限,次の対策をとろう!

著者紹介

本郷 貴裕(ほんごう たかひろ)
[プロフィール]
英文契約の個別指導・社内研修講師。
東北大学工学部機械知能学科卒業。一橋大学大学院法学研究科修士課程修了。
株式会社東芝で企業法務として海外に発電所を建設するプロジェクト,国際仲裁案件,海外企業買収案件等多数の海外案件に携わる。
その後独立し,海外案件で活躍する日本人を育成したいと思い,英文契約,特に海外でプラント・インフラ・その他の建設契約のチェックの仕方について指導する本郷塾を立ち上げる。
これまで重電メーカー,重工メーカー,プラントエンジニアリング企業,建設会社,および総合電機等の営業・技術・法務部門を対象に個別指導・社内研修を実施。

[主な著作]
『はじめてでも読みこなせる英文契約書』(明日香出版社)
『英文EPC契約の実務』(中央経済社)
『EPC契約の請求実務がわかる本』(中央経済社)