碩学叢書/ビジネス・ケース・ライティングの方法論的研究―ジャーナリズムと経営学のフロンティア
- 本の紹介
- ケースは経営学で多用されるが、読ませるための工夫についての解説は少ない。メディアと学術両方の経験をもつ著者が、ケースのあるべき姿と書く際の心得に迫る定性的方法論。(発行=碩学舎)
目次
はじめに
序 章 ジャーナリズムと経営学の「建設的摺り合わせ」
経営学への貢献
比較対象は「ハイエンドなジャーナリスト」
「妥当性」の概念
「理論」とは何か、「事実」とは何か
目から鱗が落ちる「記述」
「フィールドワーク」の種類
「優れたルポタージュ」の死角
「日常の理論」とケース
学術書らしくない学術書
啓蒙する手段として
「経営史的要素」を加えた5作品
第1章 「ビジネス・ジャーナリズム」とは何か
「ジャーナリズム」の定義
二種類の「プロフェッション」
習うより、慣れよ
万人に理解してもらえる表現
起源は18世紀のアメリカ
日本ビジネス・ジャーナリズム史
「二大ビジネス誌」の出現
「拡がる可能性」と「予期できぬ未来」
第2章 ジャーナリスティック・ケース論
経営学に貢献できる「マス・メディア」の特性
「日常の理論」を踏まえて
ジャーナリストが陥る「二律背反」
広告的色彩が濃い媒体
「ビジネス・ケース」に近接する「文学」
経済小説の強み
「事実」に近づく手法
書けないことが書ける意義
「架空のケース」への応用
「もっともらしい事実」が形成される背景
「収益源の確保」という存在被拘束性
「話題設定機能」の活用
歴史家の方法論に類似した「調査報道」
第3章 アカデミック・ケース論
「アカデミック・ケース」と「ストーリー」の違い
「学術論文の作法」とケースの表現
「アカデミック・ビジネス・ケース」の目的
「表現の自由」が制約されるマスコミ人
「時の企業」について書く是非
「社会的影響力」という基準
文章量が左右する「信頼性」
「長いケース」の長所
「調査方法」に見る価値観の相違
人に会って話を聞く効用
第4章 「ケース・ライティング」の実践
「ビジネス・ケース」を作成するプロセス
前工程と後工程
ジャーナリストの取材に応じる「企業の本音」
原稿はチェックしてもらうべきか
「敗軍の将、兵を語る」の舞台裏
限られた条件下で「信頼性」を確保する策
「インタビュー技術」の有効活用
「アドリブ」が求められる理由
「時の人」だったカルロス・ゴーンにインタビューして
「ジャーナリスト」の真似をすべきか
相手の顔を見て話を聞く
録音機を使うべきか、使わざるべきか
新聞記者の「古典芸」
技能を劣化させる「機器の使用」
第5章 読ませるための「一工夫」
「論理」と「文学性」の間
『雪国』の書き出し
「事実のイメージ性」に配慮したケース
人文学的アプローチ
文章の流れを遮る「数字の羅列」
「レトリック」と「ロジック」
「精緻な記述」だけで十分か
「小見出し」の演出力
「読み易い文章」を書くために
第6章 「合理性と例外」を超える洞察
「時事的観察」と「長期研究」のジレンマ
ジャーナリストに負けない情報収集力
チャンドラーの「歴史に残る偉業」
ケースと理論の関係
「中範囲理論」の立場
ジャーナリストが使い始めた「研究者の表現」
第7章 「社会的影響力」を持つことの是非
経営者やビジネスマンのニーズ
学術書と一般書の溝を埋める
学会という「世間」
「学術の発信」を滞らせた原因
「日本語」を大切にする意識
研究者がテレビに出演した結果
「研究者」の本分
経営学者が言う「エッセイ」
学術と知的大衆を接着する「のりしろ」
第8章 オンライン戦国時代
百花繚乱の様相
「有料化」に力を入れる理由
ビジネス・ジャーナリズムの雄
DX が進展しない理由
「先見性」とは何か
DX は「魔法の杖」にあらず
既存メディアのネット・メディア戦略
第9章 ネット・メディアに見る具体例
百聞は一見(一読)に如かず
第10章 書籍に見る具体例
旧聞ながら「5冊」を取り上げた背景
松下電器「再生」の論理
シャープに見る「コア事業を持つ多角化」
三洋電機が元気だった頃
歴代のトップにインタビューした成果
期せずして招いた結果
終 章 経営学と表現
「実務の方法論」を応用するリスク
経営学で稀有な「学際的研究」
「会社の評判」は何で決まるか
「広報の迂回効果」
「日経」と「夕刊フジ」の読者は同じ
「納得性」を高める二つの方法
ビジネス・ジャーナリズムの「胡散臭さ」
「事実は小説よりも奇なり」の意味
注目される「主観的なアプローチ」
「企業人の認識」を踏まえた論考
おわりに