- 本の紹介
- 株主価値経営と日本的経営の融合は可能か。かつて日本的経営ともいわれた日本独自の経営原理に欧米流の株主価値経営が導入されるなかで、その変化と問題点を検証しポスト株主価値経営を俯瞰。
目次
現代の財務経営8
日本的財務経営
目次
第1章 日本的財務経営とは何か
1 残ったメインバンク・システムと株式持ち合い
(1) 本来の財務経営
(2) 日本的財務経営
2 日本における機関投資家の依存体質とファンド経営の
短期成果主義
(1) 機関投資家の法人依存と低い運用収益
(2) ファンドの出資構造と短期成果主義
3 破綻した株主価値経営と日本的財務経営
(1) アメリカ発金融クライシス
(2) 日本的財務経営の破綻
4 これからの日本的財務経営
(1) 国家管理と雇用の確保
(2) 社会性概念の導入
第2章 日本的財務の仕組みとその変貌
1 戦後日本企業の財務構造:借金経営,系列融資,
メインバンク・システム
(1) 高度成長期の「借金経営」体質
(2) 銀行と企業の株式相互持ち合い
(3) バブル期エクイティ・ファイナンスの盛行とバブル崩壊
……ほか
2 バブル崩壊後不況期における日本企業の財務構造の変化と
持ち合い崩れ
(1) バブル崩壊後のリスク拡大
(2) バブル崩壊後日本企業の財務体質改善
(3) 持ち合い崩れ
3 近年における株式所有構造の変容とM&Aの盛行
(1) メインバンク関係,持ち合い関係の現状
(2) M&Aの盛行
(3) M&Aの実際:ライブドア事件を例に
第3章 日本企業の財務戦略と機関投資家の変貌
1 外国人投資家が企業にもたらしたもの
2 個人,法人株主から機関投資家へ
3 機関投資家の変貌
(1) 株主構成の変貌
(2) 株主としての行動の変貌
(3) 6大企業集団における株式所有状況の変化
4 企業財務に与えた影響
(1) 対象企業
(2) 貸借対照表の構成
(3) 株主構成の推移 ……ほか
第4章 新たな企業経営者の役割
1 経営者の見ている景色の変化
2 以前は銀行の顔色,今はマーケットの顔色
(1) 資本コストとWACCの例
(2) 企業価値とTOB
3 遠距離,近距離,直近の利益を追う経営
(1) エージェンシー理論の必要性
(2) 経営におけるエージェンシー理論
(3) マスコミとエージェンシー理論 ……ほか
4 おわりに
第5章 投資家の株式保有目的
1 はじめに
2 経営環境の変化が配当政策に与えた影響
(1) 経営者の配当観
(2) 経営環境の変化
(3) アンケート調査に見る配当政策の現状
3 保有主体別等持ち株比率と配当性向,ROEの関係
(1) 仮説と検証方法
(2) 保有主体別等持ち株比率と配当性向,ROEの相関関係
(3) 検定結果
4 おわりに
第6章 株式持ち合いの新たな役割
―戦略的提携としての株式持ち合い
1 復活する株式持ち合い
(1) 現在の株式持ち合いの状況
(2) 株式持ち合いの効果
(3) 事業会社間の株式持ち合い実施企業数
2 なぜ,今株式持ち合いを行っているのか
(1) 買収防衛策としての株式持ち合い
(2) 株式持ち合いの問題点
(3) 機関投資家支配における企業行動と株式持ち合い ……ほか
3 持ち合い実施企業の分類
(1) 戦略的提携の定義と提携の種類
(2) 持ち合い実施企業の類型化
4 現在の株式持ち合いの評価
(1) 持ち合い実施理由の再検討
(2) 企業が置かれている環境
(3) 今後の株式持ち合いの行方
第7章 取引仲介からソリューション業務へと進化する総合商社
1 代行・取引仲介業務からソリューション業務へ
(1) 集団内取引の縮小
(2) 英米機関投資家の台頭
2 1990年代までの総合商社経営
(1) 戦後復興期:1945〜60年
(2) 高度成長期:1960年代
(3) 海外展開期:1970年代 ……ほか
3 経営改革と株式市場の圧力
(1) バブル崩壊と新たな経営改革
(2) 株式所有構造の変化と株主価値経営
4 資源メジャー,投資銀行化の経営戦略
(1) 資源高,新興国成長,決算に好影響
(2) ファンド事業と投資銀行化
5 金融クライシスと今後の商社活動
第8章 コーポレート・ガバナンスの新動向
1 コーポレート・ガバナンスの意味と歴史的変遷
2 企業のステークホルダー,それぞれの役割
3 財務の視点で見る「内部統制」の有効性
4 コーポレート・ガバナンスの担い手を探る
第9章 わが国における内部統制の意義と課題
1 はじめに
2 わが国における内部統制にかかわる関心の動向
3 わが国における内部統制に関する議論の経緯:法的側面から
(1) ガバナンスの体制整備に関する議論:会社法による内部統制
(2) 財務・会計監査に関する議論:金融商品取引法による内部統制
4 内部統制概念に関する整理:COSOフレームワークに基づく
わが国の内部統制概念
(1) 内部統制の「4つの目的」
(2) 6つの基本的要素
(3) 内部統制フレームワークの概要 ……ほか
5 会社法と金融商品取引法による内部統制概念の論点整理と
問題点
6 コーポレート・ガバナンスの観点からの内部統制の意義と課題
(1) 内部統制とコーポレート・ガバナンス
(2) 内部統制の限界
7 おわりに
第10章 環境財務の構築と日本企業の財務戦略
1 企業財務の変遷と環境問題
(1) 企業財務と市場の変化
(2) 企業財務の変容と環境問題解決への寄与
2 企業評価と環境リスク
(1) 企業財務における環境リスクとは
(2) 機関投資家のESGガバナンスとリスク
(3) 銀行のカーボン・ガバナンスとリスク
3 企業財務と環境オポチュニティ
(1) 環境金融市場の概観
(2) 企業財務における環境オポチュニティの可能性
4 日本企業の環境財務戦略の問題点
第11章 日本における証券化商品市場の今後の効果的な役割
1 はじめに
2 日本における証券化の財務的意義と特徴
3 サブプライム問題とは何か
4 サブプライム問題以降の証券化の役割
5 おわりに
第12章 連結経営と企業グループの再編
1 はじめに
2 企業を取り巻く環境の変化:法制度の改正・変更を中心に
3 M&Aを通じた事業領域の再編
4 価値最大化を図るための組織再編と財務戦略:電気機器企業を
中心に
(1) 電気機器企業のM&Aの実際
(2) パナソニック(松下電器産業)
(3) 日立製作所 ……ほか
5 日本的経営と企業価値創造経営の統合に向けて
第13章 これからの日本企業の財務戦略
―M&Aの時代,企業価値向上を目指して
1 M&Aの増加と買収防衛策
(1) 日本企業の財務戦略をめぐる環境の変化
(2) M&Aブームの内実
2 企業価値向上の構造分析
(1) 将来キャッシュ・フローの現在価値としての企業価値
(2) 企業価値向上と経営戦略
3 株式会社の本質をふまえて財務戦略を考える
索引
著者プロフィール
坂本 恒夫(さかもと つねお)
1947年生まれ
明治大学大学院経営学研究科博士後期課程修了
〔現在〕 明治大学教授,明治大学副学長(研究担当),日本経営分析学会会長,日本経営財務研究学会前会長,〈中小企業・ベンチャー〉ビジネス・コンソーシアム副会長。経営学博士。
〔主著〕
『企業集団財務論』泉文堂,1990年。
『企業集団経営論』同文舘出版,1993年。
『戦後経営財務史』T&Sビジネス研究所,2000年。
『テキスト財務管理論』(編著)中央経済社,2002年。
『成長戦略のための新ビジネス・ファイナンス』(編著)中央経済社,2007年。
松村 勝弘(まつむら かつひろ)
1945年生まれ
立命館大学大学院経営学研究科博士課程中退,博士(経営学)
〔現在〕 立命館大学経営学部教授,立命館大学大学院経営管理研究科長・教授(併任),公認会計士試験試験委員(経営学),経営財務研究学会評議員。
〔主著〕
『アメリカ・ドイツ企業会計史研究』(編著)ミネルヴァ書房,1986年。
『日本的経営財務とコーポレート・ガバナンス(第2版)』中央経済社,2001年。
『エクセルでわかる企業分析・決算書』(共編著)東京書籍,2003年。
『現代企業の財務戦略(第5版)』サイテック,2009年。
『経済・経営系学部の情報リテラシー(2009年度)』(共著)学術図書出版社,2009年。
『企業価値向上のためのファイナンス入門−M&A時代の財務戦略−』中央経済社,2007年。
『財務諸表分析入門−Excelでわかる企業力』(共著)ビーケーシー,2009年。